チャージポンプ方式DC-DCコンバーター(3V→9V)の実験

[公開:any]

[電子工作/実験]
[DC-DCコンバーター,LMC555,ICL7660,チャージポンプ,74HCU04]

origin 2008-10-15


 前回の「チャージポンプ方式DC-DCコンバーター(5V→9V)の実験」では、とりあえず約5V(正確には4.8V)から9Vへの昇圧するチャージポンプ方式をテストしました。また、発生するノイズがラジオなどの高周波アナログ回路に与える影響が小さいことも確認しました。
 今回は、より実践的に乾電池2本の3Vから9Vへの昇圧をチャージポンプ方式で実現する方法を実験してみました。

チャージポンプ2段?

 乾電池2本の3Vをソースとして9Vを得る回路を考えます。普通にチャージポンプ方式を使うと3V×2倍で、最大6Vまでしか得られません。しかし、チャージポンプを2段とすれば、2×2で4倍・・・つまり、3V×4倍で最大12Vの電圧が得られると考えました。

 ・・・で、この実験回路図です。チャージポンプの部分の接続が、かなり怪しいですが、とりあえず動作します。


 負荷として47KΩの抵抗を接続したときに、出力電圧として9V以上が得られます。計算では、12V近くが得られるはずですが、ダイオードによる電圧降下の影響で低くなると思われます。
 この回路では、直列部分で4個のダイオードがあるので、最低でもVF(順方向降下電圧)の0.4Vの4倍の1.6Vが電圧降下するハズです。


 負荷抵抗を変化させたときの一覧表です。負荷電流1mA程度まで実用できそうです。

負荷抵抗[Ω] 入力電流[mA] 出力電圧[V] 出力電流[mA] 効率[%]
0.01 10.24
100000 0.39 9.62 0.10 79
47000 0.73 9.24 0.20 83
22000 1.49 9.06 0.41 83
10000 3.01 8.44 0.84 79
6800 4.19 7.99 1.18 75
5600 4.95 7.72 1.38 72
4700 5.72 7.45 1.59 69
3300 7.43 6.85 2.08 64
2200 9.83 6.04 2.75 56
1000 14.99 4.27 4.27 41

 パルス信号のソースをICL7660からLMC555に変更して試してみました。発振周波数とデューティ比を変化させて、もっとも高い出力電圧が得られるようにした状態です。


 出力開放時には、ICL7660よりも高い電圧が得られますが、負荷をかけると急激な電圧ドロップがあります。

負荷抵抗[Ω] 入力電流[mA] 出力電圧[V] 出力電流[mA] 効率[%]
0.29 11.28
100000 0.67 9.73 0.10 47
47000 1 .00 8.64 0.18 53
22000 1.48 6.79 0.31 47
10000 1.79 4.01 0.40 30
6800 1.84 2.84 0.42 21

 結果的に乾電池2本の3Vから9Vを得るには、ICL7660を使用したチャージポンプ2段回路がいいようです。LMC555は、バイポーラICの555と比較すると出力が小さいことが影響していると思います。

CMOSインバータでチャージポンプ

 CMOSインバータICの74HCU04を使ったチャージポンプ方式DC-DCコンバータをテストしました。
チャージポンプ回路自体は、74HC04もアンバファタイプの74HCU04も同じように動作します。ただし、インバータ2段のCR発振回路は、74HC04だと不安定で正常に発振を開始しないことがありました。安定した発振を得るには、アンバッファタイプがいいと思われます。
 なお、発振周波数は、約45KHzとしましたが、2KHz〜100KHzの範囲でテストしたところ、得られる出力に大きな差はありませんでした。


 負荷に47KΩの抵抗を接続したときの出力電圧は、10Vを超えて十分な余裕があります。チャージポンプ回路の段数を減らすと9Vまでは昇圧できないので、部品数は多くなりますが、CMOS4段が必要です。


 出力波形を確認すると、パルス信号の発振周波数と同じリプルが確認できます。負荷をかけると、負荷に比例してリプルの振幅が大きくなります。


 負荷抵抗を変化させたときの一覧表です。効率は低いですが、上のICL7660+チャージポンプ2段よりは、出力電圧に余裕があります。

負荷抵抗[Ω] 入力電流[mA] 出力電圧[V] 出力電流[mA] 効率[%]
2.5 11.51
100000 2.93 10.99 0.11 14
47000 3.42 10.77 0.23 24
22000 4.54 10.33 0.47 36
10000 6.3 9.64 0.96 49
6800 7.72 9.11 1.34 53
5600 8.71 8.72 1.56 52
4700 9.62 8.35 1.78 51
3300 11.57 7.53 2.28 50
2200 14.02 6.33 2.88 43
1000 17.74 3.79 3.79 27
820 18.3 3.28 4.00 24

 CMOSインバータのCR発振を使用せず、ICL7660の発振出力や、LMC555の発振出力をCMOSインバータのチャージポンプ回路に加えてもほぼ同じ出力が得られます。

 短波ラジオを近づけてノイズの影響を調べると、ICL7660やLMC555で使用したチャージポンプ方式よりもノイズが大きく感じます。特に、放送を感度よく受信している状態でも、高周波音のノイズが聞こえるのでちょっと気になります。

動作シミュレーション


 「短波ラジオの製作その2(LA1600)」で採用したバリキャップダイオードの1SV149を使った同調回路と局発回路が正常に動作するか実際に動作シミュレーションしてみました。1SV149は、要求電圧は9V程度必要ですが、電流は最大でも50nAと非常に少ないので、いずれも回路も同じように動作させることができました。
 なお、局発の発振を確認したのみで、実際のラジオとしての受信動作は確認していません。



番外編

 インダクタ(コイル)を使用した通常のスイッチング方式DC-DCコンバータもテストしたので紹介します。

 パルス信号源として、LMC555を使用して入力電圧は乾電池2本を想定して3Vとしました。回路はチャージポンプ部分をMOS-FETを使用したスイッチング回路に変更したものです。
 スイッチング素子として使用したMOS-FETの2SK2541は、ゲート電圧が1.5Vと低い電圧で動作保証されたものです。ただ、小電力のスイッチング用MOS-FETなので、大きな出力を得る用途には使用できません。
 スイッチング方式は、自走させると高い電圧を出力するので、フィードバック制御してあります。


 フィードバック制御なしで動作させると出力開放時に20Vを超える高い電圧が出力されます。


 負荷に47KΩを接続して出力電圧を約9Vとしたときの入力電流は、21mAとなりました。出力電流の割には、大きな入力電流が必要となるようです。乾電池動作を考慮すると、かなり厳しい状況です。ちなみに、同じ負荷抵抗で、出力電圧9Vを得るに必要な最低入力電圧は、2.4Vとなりました。


 出力波形には、スパイク状のノイズが盛大に含まれています。周期は、パルス信号の周期となっています。
 短波ラジオを近づけると広い範囲で高いレベルのノイズを拾います。ラジオの電源として利用することは難しいと思います。


 パルス発生源として、PICやAVRなどのワンチップマイコンを使用して、電圧のフィードバック制御にPWMを使用すれば、効率は改善できると思いますが、ノイズは同じようなものだと思われます。


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