広帯域プリアンプの製作その2

 「広帯域プリアンプの製作」で1台作ったのですが、入出力インピーダンスが75Ωとなっているのがちょっと気になります。今回、東芝VHF-UHF広帯域増幅用ICのTA4002Fを入手したので、もう1台、広帯域プリアンプを作ってみました。このICは、周波数帯域1.3GHz(3dB down)で利得が23dB(500MHz)となっています。入出力インピーダンスが50Ωなので広帯域受信機などに使いやすいと思います。ただ、パッケージがSOPなので米粒ほどの大きさになります。

東芝VHF-UHF広帯域増幅用IC TA4002F
東芝VHF-UHF広帯域増幅用IC TA4002F

 回路も簡単です。データシートのサンプルと同じ構成します。電源は、5Vが必要となるので3端子レギュレータを使用します。

TA4002F広帯域プリアンプ回路図
TA4002F広帯域プリアンプ回路図

 基板のパターンも簡単なので、「PPテープでプリント基板エッチング」で作ってみました。細かなところを間違えたので油性マジックで補正してエッチングしました。適当に目分量で切り出しを行ったので出来上がりもそれなりですが、こんなもので十分だと思います。

 部品を取り付けてケースに入れます。基板を直接BNCコネクタに半田付けして保持する方式としました。GigaStに接続してゲインを測定します。(測定時は、ケースのふたを閉めています。)

 GigaStをTGモードにして測定した1000MHzまでの利得特性です。オレンジラインがスルーで、紺色ラインがプリアンプ経由です。(以下すべて同じ)
 なんかひどい状況となっています。300MHz前後をピークとした特性で、データシートの利得特性からはかけ離れた状況です。電源回りがおかしいのかとパスコンを増やしたり場所を変えたりしたのですがまったく状況は変化なしでした。

 基板のパターンが悪いのかとベタ基板にランドを貼り付けて作る通称「ベタアース貼り付けランド基板」方式でも作ってみました。

 GigaStで利得特性を見ると、素直な特性とはいえませんが、先ほどよりはいいようです。

 ところがケースに入れると特性が悪化します。インピーダンスのミスマッチなのか変な共振があるのか良くわかりません。ケース内の基板の位置でも大きく特性が変化します。

 はじめの基板をコネクタに直接固定する方法ではなく、短い同軸ケーブルで接続して基板をケース底面に両面テープで固定すると、ある程度、フラットな利得特性が得られることがわかりました。ただ、それでも800MHz以上は怪しいです。

 ワンチップで広帯域のアンプが簡単に出来ますが、ただ作って受信機の前段に接続し、特定の信号を耳で聞いたり信号メータなどで確認する分には問題なく動作していると判断できるでしょう。しかし、GigaStなどのスペクトラムアナライザで、利得の周波数特性を見てみると、その実装によって特性が大きく変化することがわかりました。やはり高周波はややこしいです。


作り直し

 GigaStで測定した特性に今ひとつ満足できていません。ケース内の作りもトリッキーです。新たに作り直すことにしました。回路は基本的に同じものとしますが、電源回りを多少変更しました。

TA4002F広帯域プリアンプ回路図
TA4002F広帯域プリアンプ回路図

 基板も、PPテープエッチング方式できちんと作り直します。前回まではガラス・コンポジット片面基板を使用していましたが、今回はガラス・コンポジット両面基板として裏面が全面アースとなるようにしました。いくつかあけた穴は表面アースと裏面とのビアです。

TA4002F広帯域プリアンプ基板
TA4002F広帯域プリアンプ基板

 部品はすべてチップ部品としました。ケースへの固定はコネクタへ直接半田付けする方法としました。アース接続は面積を稼ぐために0.3mmの銅版をつかってコネクタと基板を接続しました。

TA4002F広帯域プリアンプ内部

 GigaStをTGモードにして測定した利得の周波数特性です。前回のものと比べて利得の微妙な変動もなくなり900MHzまでは安定して20dBの利得が得られます。


 スペアナ(DSA815-TG)で周波数特性を取り直しました。

TA4002F広帯域プリアンプ利得特性

5件のピンバック

コメントは現在停止中です。