リターンロスブリッジの製作

※使用する抵抗が出来る限り50Ωに近いものと考え、5%誤差のカーボン抵抗から選別したのですが、カーボン抵抗(炭素皮膜抵抗)が高周波的に良くないとの助言をいただきました。3本の抵抗値がそろっていれば51Ωでも問題なく、高周波特性のよい金属皮膜抵抗を使ったものが特性的に安定するとのことです。・・・ということで、ページ末尾でカーボン抵抗から金属皮膜抵抗に改修したものを掲載しました。(2009-02-21)

※あらたにリターンロスブリッジの製作その2で作り直しています。

 スペアナ・アダプターGigaSt v5は、トラッキング・ジェネレータを内蔵しているので、リターンロスブリッジを使えば、アンテナ等のVSWRを精密に測定できます。VSWRは、電圧の定在波比のことで、単にSWR(エス・ダブルユー・アール)と呼ばれることが多いと思います。アマチュア無線をされている方は、送信時に問題になるので、よく知っていると思いますが、一般的にはあまり知られていないかもしれません。でも、利用する周波数でのアンテナの特性を知るためには、よい指標となるので受信専用アンテナの調整にも使えます。

 Webで作成例を探すと、書籍「(定本)トロイダル・コア活用百科」を手本に作成された事例が多いようです。早速、書籍を調達して作ってみることにします。

トロ活
トロ活

 基本的には、書籍と同じ回路としましたが、入力のアッテネータは省略しました。バランは、フェライトビーズのFB-801-43を使用して、UHFまで使えるようにUEWφ0.2をバイファイラー5tとしました。バランは、そのままでは、振動に弱いのでホットボンドで固定しました。
 使用する抵抗は50Ωが指定されています。しかし、市販品はE24系列の51Ωが多いと思います。今回は、51Ω誤差5%のカーボン抵抗から、50Ωに近いもので、小数点以下1桁まで同じ値となる抵抗をマルチメータで選別しました。回路は、なるべく浮遊容量が小さくなるように作り、金属ケースに入れる必要があります。

自作したリターンロスブリッジ内部
自作したリターンロスブリッジ内部
リターンロスブリッジ内部
リターンロスブリッジ内部

 GigaStに接続して測定してみます。

リターンロスブリッジ
リターンロスブリッジ

 測定端を開放したときの減衰特性です。500MHz程度までは、フラットです。ショートすると若干レベルは低下しますが大きな変化はありませんでした。

 測定端を50Ωで終端したときの減衰特性です。500MHz程度までは、-40dB程度の減衰量が得られました。

 「エアバンド受信機の製作」で作成したロッドアンテナを使用したL型ダイポールアンテナを実際に測定してみます。このアンテナは、エアバンドの受信専用としてエレメント(収縮ロッドアンテナ)を1/4波長に調整して125MHzに同調するように作成してあります。一応は、完成後にグリッドディップメータで調整したのでおおよそ同調していると思われますが、グリッドディップメータでは、VHFの同調点を見つけるのは大変なのでかなりアバウトな状態となっています。

 リターンロスブリッジの測定端にアンテナを接続して、GigaStで減衰特性を見てみました。設計どおり125MHzで鋭いディップが見られます。測定端開放時のリターンロスを11dBとすると、125MHzでのリターンロスが約22dB(32dB-11dB)なので、VSWRは、1.17程度となります。ただ、360MHz付近にも同調点があるようです。

 L型ダイポールのインピーダンス調整は、水平エレメントの角度を調整することで最適点が得られるハズです。・・・ということで、GigaStでリターンロスを見ながら水平エレメントの角度をいろいろ変化させてみると、この写真の状態がもっともリターンロスが大きくなるようです。

 水平エレメントを若干下げたときの減衰特性です。リターンロスが約31dBとなりました。VSWRは、1.06程度です。50Ω終端時とほぼ同じリターンロスなので測定限界と思われます。

 このようにリターンロスブリッジを使えばアンテナの調整が簡単になります。特に受信専用アンテナ等で送信機を使用せずにアンテナを製作する場合には、かなり便利なツールとなりそうです。

 GigaStなどのスペクトラムアナライザーがなくても、リターンロスブリッジがあれば、信号源となる信号発生器と信号レベルを測定する電界強度計を使えば同じように測定することが出来ます。
 「電界強度計の製作」で作成したものを使用して同じようにエアバンド受信用アンテナを測定してみました。信号発生器の周波数を変化させながら、リターンロスブリッジの測定端の開放時のレベルとアンテナ接続時のレベル差を順番にプロットしていくと、同じように125MHz付近で、リターンロスが最大となり、同調点を見つけることが出来ました。リターンロスの測定値もGigaStとほぼ同じ値が測定できます。

 VSWRの絶対値を求める必要がなく、同調点をさがすだけなら、リターンロスブリッジと簡単な信号発生器と高周波電流計があれば利用できそうです。


カーボン抵抗から金属皮膜抵抗へ改修

 カーボン抵抗は、コイルと同じ構造をとっているものがあり、高周波特性が良くないようです。高周波特性のよい金属皮膜抵抗に変更して特性を取り直してみました。

 リターンロスブリッジの測定端を50Ωで終端し、GigaStのTGモードで0~1000MHzまでのリターンロスを測定してみました。カーボン抵抗のときは、200~300MHzで40dBを下回る部分があったのですが、今回は、400MHz付近まで45dB以上と改善しています。ただ、残念ながら500MHz付近は、悪くなってしまいました。

 0~500MHz部分をクローズアップしたものです。450MHzまでは、リターンロスが30dB以上取れるようなので自分の用途からは十分だと判断しました。

※リターンロスは、測定値から開放時の測定値を引く必要があります。測定値そのものをリターンロスとして記載していたのは間違いでした。ご指摘ありがとうございます。

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