10MHz用のマイクロバートアンテナの製作

 FT8で運用していると10MHzや14MHzでのQRVする局が多く聞こえて魅力的です。7MHzのダイポールアンテナ(フルサイズの逆V)にアンテナチューナーを使って10MHzにQRVしています。アンテナの効率が良くないのでDXとの通信に苦労します。聞こえてはいるのですがピックアップしてもらえないことが続きます。普段は20W程度しか出していないのですが、仕方なく100Wにパワーを上げて運用していました。
 ある日、突然、このダイポールアンテナが故障しました。7MHzではバンド内がほぼSWR1.5以下だったのが、SWR3以上となってしまいました。ケーブルやSWRメーターを交換したのですがダメです。このダイポールアンテナは製作してから20年以上たっていますので寿命かもしれません。
 アンテナをおろしてエレメントやバランを確認しましたが、エレメントは問題ありませんでした。バランはRAICのBL-50Aという製品でした。バラン自体は1983年に購入して37年間も利用したものです。一見問題なく見えますが、よく見てみると本体にひびが入っています。雨水が入ってバランが故障したのかもしれません。

バラン(RAIC BL-50A)
バラン(RAIC BL-50A)
バラン(RAIC BL-50A)
バラン(RAIC BL-50A)

 バランに50Ωの抵抗をつないでSWRアナライザーで見てみると7MHzではSWR1.07と良好です。スペアナでリターンロスを確認するとローバンドは問題ないのですが、21MHzでリターンロスが14dB(SWR1.5程度)となりハイバンドでの特性が良くありません。もともとこのような性能なのか性能が劣化したのか判断がつきません。測定方法(抵抗のつなぎ方)に問題がある可能性もありますが、ひび割れもあることから利用はやめることにします。あらかじめ交換用として用意してあったダイヤモンド社のBU-50Aに交換してエレメントも新しくしてダイポールアンテナを張ることにしました。

バラン(RAIC BL-50A)
バラン(RAIC BL-50A)
バラン(RAIC BL-50A)のリターンロス

 10MHzでもアンテナが欲しくなります。以前、7MHz用のマイクロバートアンテナの試作でベランダに上げっぱなしにしてあったアンテナを改造することにします。このアンテナは根元のポールに雨どいパイプを利用したのでラジエターエレメントの重さでパイプがしなって不安定な状態でした。

仮設した10MHzマイクロバートアンテナ

 雨どいパイプよりも少しだけ丈夫な塩ビパイプ(VU40)長さ2mを利用します。ラジエターエレメントはそのまま使いまわしです。ただ、長さを最大の3mとしてタッピングビスで固定しました。同調周波数は共振コイルで調整するつもりです。RFチョークも使いまわしです。トロイダルコアFT140-43に1.5D-2VをW1JR巻で16ターンとしたものです。10MHzでのインピーダンスは10KΩ以上となるので問題ありません。ただ、コアの大きさから許容通過電力は50W程度までとなります。

マイクロバートアンテナ固定部
マイクロバートアンテナRFC

 共振コイルはラジエターエレメントを固定した塩ビパイプにUEW1.0を直接巻きました。MicroVert Antenna Calculatorでの計算は11ターンとなったので少し多めの12ターンとしました。このときのインダクタンスは9.3μHとなりました。ラジエターエレメントとカウンターポイズになる同軸(RG58A/U)5.8mをつないでベランダで調整です。SWRアナライザーで見てみると、最初は8.0MHz近くに同調していました。本来ならラジエターエレメントの長さを短くすればよいのでしょうが、放射効率を考えて、できるだけ長いエレメントを使用したいのでコイルの巻き数を減らします。10ターンまで減らしたところで運よく10MHzに同調しました。

10MHzマイクロバートアンテナコイル
10MHzマイクロバートアンテナコイル

 前回と同じようにベランダの柵(出窓の花台)に塩ビパイプを固定して完成です。雨どいパイプと違って大きくしなることはありません。ラジエターエレメントの高さは2Fの屋根と同じくらいです。共振コイルは自己融着テープで防水してその上からビニールテープで保護してあります。

10MHzマイクロバートアンテナ設置

 スペアナでリターンロスを確認すると10MHzで同調しています。FT8で使用する付近の10.13MHzではリターンロスが23dBとなりました。SWRは約1.15となります。もう少し調整したいのですが、コイルの巻き数1ターンで1MHz程度変わるのでむつかしいです。ラジエターエレメントの長さを変えるのがセオリーですがビスで固定したので困難です。このまま使用することにします。

10MHzマイクロバートアンテナリターンロス広域
10MHzマイクロバートアンテナリターンロス狭域

 実際に利用してみました。新たに張りなおした7MHzダイポールアンテナと比較して、耳で聞いた感じはほぼ同等ですが、SメーターではダイポールアンテナよりもSが2~3程度良い結果がでました。少なくとも受信に関しては短くても共振したアンテナのほうが良い結果が得られます。ただ、ダイポールアンテナではノイズは少ないのですが、マイクロバートアンテナでは全体的に「ジャー」というノイズが聞こえます。このノイズは周波数を変更しても大きく変わることなく、Sメーターが常時3~4程度となっています。ダイポールアンテナではSメーターで1~3程度なので垂直系アンテナと水平系アンテナの差でしょうか。
 FT8でCQを出しているDX局を呼びまわったのですが、20Wではだめですね。受信でS/Nが0dB以上の局であれば、ほぼ一発で交信成立しますが、S/Nが0dB以下の場合は、たいがい呼び負けます。S/Nが-10dB以下の局には全く無視されることが多いです(つまり相手に届いていない)。50Wを入れてみるとS/Nが0dB以下の局に3回アタックするとなんとか拾ってもらえます。
 マイクロバートアンテナ自体は製作・調整も簡単で再現性も良いのでお勧めできます。7MHzのマイクロバートアンテナでは、2階のベランダから突き出した状態で国内QSOでは全く問題ありませんでした。アンテナの設置環境が良くない場合は、利用する価値は十分にあります。ただ、ローバンドでのDXはある程度パワーをかける必要がありそうです(これはどのアンテナも共通ですが・・)。現在のアンテナの地上高は6m程度なので、これを高く上げてみると状況は変わるかもしれません。

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