3.5MHzと7MHzの2バンドダイポールアンテナの製作

 3.5MHzのアンテナをマイクロバートアンテナからATU+デルタループアンテナに変更してからFT8で相手からのレポートが悪いと感じていました。しかし、それぞれのアンテナでのSNRレポートを散布図にプロットしてみると大きな違いはありません。回帰直線の傾きもからもアンテナの性能に大きな差は無いとみていいでしょう。ただし、デルタループは受信が若干弱いようです。

FT8でのSNR report散布図 データ数はマイクロバートが277,デルタループが80,縦軸Hisが送ったSNR,横軸MyがもらったSNR、破線はそれぞれの回帰直線を示す
FT8でのSNR report散布図 データ数はマイクロバートが277,デルタループが80,縦軸Hisが送ったSNR,横軸MyがもらったSNR、破線はそれぞれの回帰直線を示す

 デルタループアンテナはローバンドでATUを壊さないようにインピーダンス補償用の抵抗を入れていますが、この影響がハイバンドで大きいような気がします(実際のところは試してみないとわかりませんが・・)。1.9MHzはマイクロバートアンテナを使うので、3.5MHzのアンテナを用意すればデルタループは10MHz以上のみで使用できます。そうなればインピーダンス補償用の抵抗を外すことができます。

 7MHzはフルサイズのダイポールアンテナを使用しているので、これにローディングコイルを追加して3.5MHzとの2バンドダイポールに改造します。比較のためローディングコイル取付前のリターンロスをスペアナで測定してみました。SWR1.5以下が210kHzと広帯域です。中心周波数がバンド内の低い方にありますがSSBではオンエアしないので不満はありません。

 ローディングコイルを作成します。いつもの塩ビパイプVU40です。UEW1.0mmで60ターンを密巻としました。

3.5MHzローディングコイル
3.5MHzローディングコイル

 熱収縮チューブで防水して完成です。LCメーターでインダクタンスを測定すると96μHとなりました。

3.5MHzローディングコイル

 7MHzに同調しているダイポールアンテナのエレメント末端にローディングコイルを取り付け、その先に3.5MHzエレメント2.7mを追加して以下の手順で調整しました。

  • 同調周波数が7.22MHzと高くなったので7MHzエレメント側に60cmのひげをつける。その状態で6.97MHzに同調。3.5MHz帯は3.09MHzに同調。
  • 3.5MHzエレメントを30cmカット(エレメント長2.4m)。その状態で6.99MHzと3.28MHzに同調。7MHz帯の同調周波数も微妙に変化する。
  • 7MHzのひげを10cmカット(ひげ50cm)。その状態で7.02MHzと3.28MHzに同調。ひげは3.5MHz帯への影響が少ない。
  • 3.5MHzエレメントを30cmカット(エレメント長2.1m)。その状態で7.04MHzと3.45MHzに同調。
  • 3.5MHzエレメントを10cmカット(エレメント長2.0m)。その状態で7.05MHzと3.54MHzに同調して調整完了。


 本来なら3.5MHz帯のエレメントの長さは7MHz帯へ影響しないはずですが、微妙に影響が出ています。ローディングコイルではなく、トラップコイルを使った方が確実かもしれません。スペアナで30MHzまでのリターンロスを確認しました。3.5MHzと7MHz以外に20MHz付近にも弱い同調がみられますが大きな問題はなさそうです。

3.5MHzと7MHz 2バンドダイポールアンテナ
3.5MHzと7MHz 2バンドダイポールアンテナ

 3.5MHz帯のリターンロスと7MHz帯のリターンロスをスペアナで測定した結果です。3.5MHz帯はFT8で使用する3.531MHzでSWR1.2となりました。ただSWR1.5以下は約26kHzと狭帯域です。コイルのインダクタンスを60~80μHとして3.5MHzのエレメントを長くすればもう少し広い帯域が確保できると思います。7MHz帯は、SWR1.5以下が約170kHzとなりました。改造前の帯域よりは狭くなりましたがCWやFT8でのみ利用するのでこれで十分です。

3.5MHzと7MHz 2バンドダイポールアンテナ
3.5MHzと7MHz 2バンドダイポールアンテナ

 実際に使用してみましたが、ノイズはデルタループよりも少なくなり、信号の受信はSメーターでS2程度よくなりました。耳で聞いた感じでも確実に良くなっています。送信はしばらく使用してみてSNRで散布図を作成すると傾向がつかめると思いますが、3.5MHzのFT8はB4が多くなって交信数が伸びません。


2021-04-24
 短縮したアンテナは雨による影響が大きく出ます。特に3.5MHzは、雨が降っている間は同調周波数が下(バンド外)に移動して、さらに最低のSWRが2程度まで悪化します。降っている間は、アンテナチューナー等が無ければオンエアすることは難しいと思います。影響が大きいのは地面(グランド)が濡れることによる容量の変化ですが、コイル自体に水滴がつく影響もあると思います。ローディングコイルは防水しても水に濡れることで特性が変化します。左図は、雨が止んだ後の6時間後のリターンロスです。見た目では雨滴は乾いていますがSWRは1.6となります。この程度のSWRなら問題なくオンエアできます。右図は、翌日です。同調周波数が若干上に移動してSWRも少し改善しました。

 左図は雨の2日後です。この間、雨はありません。同調周波数が少し上に移動してSWRも1.5となりました。右図は雨の5日後です。晴天が続きました。地面も完全に乾いています。同調周波数は3.529MHzとなりましたがSWRは1.26までしか回復しません。完成した時よりも同調周波数が14KHz程下になり、リターンロスも全然違います。熱収縮チューブと塩ビパイプの間に雨水が入って完全に乾いていないのかもしれません。FT8の運用周波数3.531MHzではSWRが1.5以下なのでオンエアには問題はありませんが、何とかしたいものです。


2021-05-02
 その後の雨の後でSWRの戻りが悪く同調周波数も低いままなので、ローディングコイルを外して防水の熱収縮チューブをはがして見えると、雨水がコイルまで達しておりびしょ濡れです。

 コイルはしっかりと巻いたのですが、気温が上がって銅線が伸びておりユルユルとなってました。乾燥させてからしっかりと巻きなおして念のため高周波ワニスで固めました。結構しっかりと塗って水のしみ込むところをなくしました。

 熱収縮チューブは、塩ビパイプエンドにバスコークをたっぷりと塗ってからかぶせて収縮させました。ダイポールアンテナは逆V型に張るので上部となる給電側には熱収縮チューブを折り返したままとしておきます。内側を見ると余分なバスコークがはみ出していますが、これで完全防水と考えてよいでしょう。下側は塩ビバイプ内側の水滴が抜けるように余分なバスコークや熱収縮チューブの折り返しをなくしました。

 コイルの特性が変わったのかアンテナ末端部の樹木が茂ったせいか鋭い同調はなくなりました。同調周波数も少し下に移動してSWRの最低が1.3程度となりました(左図)。一方、雨の最中も同調周波数は下に移動しますがSWRの最小点はバンド内に留まっており、SWRの悪化も見られません(右図)。

2件のピンバック

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