50MHz-AM-PLLトランシーバーの製作

*ちょうど2ヶ月かかりましたが、ケースに組み込んで完成しました。(2013-09-19)
*送受信の切り替え時のPLLのタイムラグ対策を行いました。(2013-09-08)
*送信部まで作りました。もたもたとやっていますが、大きな問題にぶつかりました。^^;(2013-09-04)
*受信回路まで作成しました。(2013-08-11)
*近接スプリアス対策でVCOを作り直しましたが、結果は・・・・・(2013-07-24)

*作りかけの50MHzAMトランシーバーです。完成まで続くかは未定です。^^;(2013-07-19)

 7MHz-QRP-CWトランシーバーの製作がうまくいったので、調子に乗って新たなトランシーバの製作を始めました。今度は50MHz-AMトランシーバーです。VFOにPLLを使ってみます。トランシーバーのPLLは、周波数の微調整などで苦労しそうですが、AMなら周波数ステップが粗くても実用可能という考えです。


PLL制御回路
 PLLの回路図です。PLL-ICは、これまで製作実績がある東芝のTC9256Pを使用します。マイコンはAVRを使用します。回路は、アクティブタイプのループフィルタまでを含んでいます。(・・・といっても、TC9256Pのデータシートそのままですが・・・)
 TC9256Pは、周波数の可変ステップとなる基準周波数(リファレンス周波数)として0.5KHz~100KHzまで対応しています。今回は1KHzとしました。基準周波数が低いと、ロックする速度が遅くなったり、位相雑音が増えたりするという情報がありますが、どの程度の影響があるかは作りながら見てみることにします。

 SメーターはAVRのAD変換でLCDに表示する計画です。また、PLLの発振周波数は、受信時に中間周波数とする455KHzをシフトした周波数として、送信時は、送信周波数を直接発振させる予定です。(ちょっと、ムリかなぁ)
 基板上には、3端子レギュレータを使用した9Vと5Vの電源も実装しました。


VCO回路

 VCOの回路図です。バリキャップダイオードを使った普通のコルピッツ型(クラップ型)発振回路です。コイルはトロイダルコイルで作ります。

 ランド方式でVCOを作りました。VCO単体で発振テストすると45MHz~53MHzと広帯域の発振回路となりました。あまりにも発振する帯域が広いとVCOとしては問題ありそうな気がしますが、とりあえずこのまま進めます。

 PLL制御回路と接続してPLLの動作試験を行いました。LCDには、上段に受信周波数、下段には455KHzを加えたPLLの出力周波数を表示しています。50MHzを超える信号は、APB-3では、測定できないので、GigaStでスプリアスをみてました。高調波が大きいのですが、同調回路やフィルタで取り除くことは可能です。

 位相雑音や近接スプリアスの状況を確認するために、ブレッドボード上にLA1600の受信回路を組み立てて、SGからの50MHzAM信号を受信してみました。少しノイズっぽいですが、受信機としては、なんとか実用になりそうです。周波数を変更するためにロータリーエンコーダーを回すとノイズが聞こえます。感覚的には、PLLのロックスピードが遅くて聞こえるノイズのようです。

 実際の受信状態を確認したいのですが、アパート暮らしで50MHzのアンテナがありません。急遽、1/2波長ダイポールを作ってベランダに張ってみましたが、FT-817で受信する限りはAMでオンエアーしている局は見つかりませんでした。(SSBは、週末に数局聞こえましたが・・・・。)

 VCOは、50MHz以下も発振できるので、AVRのプログラムを変更し、APB-3で測定できる周波数にして、狭帯域でスペクトラムを測定してみました。±100KHzにやや大きなスプリアスが見えます。基本波から-50dB近くなので、耳でも聞こえそうですが、受信テストではわかりませんでした。はじめはPLLの影響(ロックスピードやループフィルタの特性)を疑いましたが、PLLの制御をはずしてVCO単体で動作させても確認できることから、VCOの問題と思われます。(APB-3には20dBのアッテネーターを入れてあります。)


VCOの作り直し 2013-07-24

 このまま送信機の局発にするには問題ありそうです。VCOのトランジスタやバイアスなどを変更しても状況はまったく変化がないので、電源からの回り込みと判断しました。トランジスターを使ったリップルフィルターを入れたスペクトラムが下の画像です。

 少しは綺麗になりましたが、相変わらず±100KHzのスプリアスが大きいです。こうなるとお手上げです。電源は、通常のトランス式安定化電源から供給しているので極端に大きなノイズは少ないと思われます。実際にオシロスコープで見てみましたがクリーンです。

 VCOの回路が悪いのかと新たに作り直してみました。今度はトランジスターの変わりにFETをつかったクラップ型発振回路としました。電源にはリップルフィルターも入れてあります。

 前のVCO基板は、スプリアス対策で試行錯誤し、いろいろと部品を交換したのでガタガタになりました。しかたなく新規に作り直しました。

 この新しいVCOでのスペクトラムを見てみるとまったく同じように±100KHzに大きなスプリアスが出ます。これでVCO自体や電源の問題ではなく何か別のものが影響していることがはっきりしました。ほかにつながっている回路は、PLL制御基板にAVRのプログラム変更のために接続してあるAVRライターのAVRISPmk2のみです。・・・AVRライターをはずして見ると綺麗にスプリアスが消えました。

 この状態で、最初に作ったトランジスターのVCOのスペクトラムを確認すると、スプリアスのない綺麗なスペクトラムが得られます。結果として、AVRライターからのノイズがPLL制御回路へのループバック信号の接続線を通してスプリアスとなっていたようです。PLL制御回路やVCO回路そのものを疑っていたので、余計な手間がかかりました。


受信部の作成 2013-08-11

 受信部は、Webを参考にLA1600を使用したものとしました。LA1600は、短波帯までのICなので、50MHzでは感度が不足します。そのため2SK241による高周波増幅部を前段に入れる必要があります。IFは455KHzなので市販のセラミックフィルターを使用します。とりあえず通過帯域15KHzのAM放送用を使用して、これで問題あれば狭帯域のフィルタに変更します。

 ランド方式で組み立てましたが、適当に作り始めると終盤には部品の配置に苦労します。使用部品や回路が決定していれば、ランド方式ではなくユニバーサル基板で作成したほうが楽かも知れません。(高周波的な特性を無視すればですが・・・・)
 信号発生器から50MHzのAMを入力して、LA1600のAF出力をクリスタル(セラミック)イヤホンでモニタするとクリアな受信音が確認できました。

 AF増幅は、いつものとおり低周波増幅ICのLM386を使用したものです。

 スピーカーをつないでモニターしてみました。信号発生器から-110dBm入力でなんとか聞き取れる程度の感度です。FT-817では、-120dBmでも聞き取れるので、比較すれば感度不足となります。
 ベランダのダイポールアンテナでは、AMでのオンエアが受信できないので、FT-817にダミーをつないでAMで送信して音声をモニターすると、音声が多少割れたように聞こえますが、問題なく受信できます。PLLで周波数可変するときも、変なノイズもなく動作は良好です。


送信部の作成 2013-09-04

 送信部を作ります。とはいっても、AMの変調回路は、よくわかりませんので、JR8DAGさんのサイトを中心にその他、いくつかのWebサイトを参考にしました。QRP機でよく見かける終段コレクタ変調です。

 ランド方式で変調回路と送信増幅回路を作りました。高調波がどの程度あるかわからないので、LPFを載せるスペースも確保してあります。PLL+VCO回路と接続して送信部のテストを行いました。黒い四角いボックスは、自作したマイクです。タカチのプラスティックケースにPTTとなるプッシュスイッチとコンデンサマイクを入れて、ケーブルには3.5Φのステレオプラグを取り付けてあります。

 GigaStで見たスペクトラムです。20dBカップラー+10dBアッテネータを介しています。電圧13.8Vで約25dBm(300mW)の出力が得られます。少し絞って23dBm(200mW)程度に調整しました。第2高調波が基本波より約50dBm低いところにあります。やや大きいと思いますが、とりあえずこのままとします。

 FT-817NDで送信波をモニターすると、ちゃんと聞こえます。音質的には問題ないと判断しました。ただ、ここで大きな別の問題に気が付きました。受信時は、受信周波数にIFの455KHzを加算した周波数をPLLで生成しています。送信時には、送信周波数(=受信周波数)を直接発振するため、PLLで周波数を切り替えるのですが、この時に送信周波数が安定するまでの時間が0.5秒程度かかることが判明しました。受信時に1KHz単位で周波数を可変するときのロックスピードは、問題ありませんが、一気に455KHz変化するときのロックスピードは、かなり時間がかかります。PLLのループフィルターを見直す必要があります。もっとも、ループフィルターで解決できる問題かどうかも検討がつきません。(挫折しそう・・・)


送受信切り替え時間の改善 2013-09-08
 VCOの制御電圧をオシロでキャプチャした画像です。受信周波数から送信周波数へ455KHz変更すると、大きなハンチングが発生して落ち着くまでに400ms以上かかっています。このままVCO出力を送信してしまうと目的周波数の周辺に妨害電波を発射することになります。AVRからリレー制御により送受切り替えを行い、送信部への電源供給にタイムラグを持たせて妨害電波を防ぐ手段をとってみましたが、400msのタイムラグは長く感じます。せめて半分の200ms程度に短縮できればいいのですが・・・

 PLLのアクティブフィルターで、コンデンサや抵抗を変更して調整してみましたが、改善はできませんでした。そもそもTC9256Pの実力として、リファレンス周波数(基準周波数)が1KHzで数100KHzの周波数変更にかかるタイムラグは、この程度の性能なのかもしれません。試しにリファレンス周波数を、2.5KHzと5KHzに変更した場合の特性をとってみました。

 やはりリファレンス周波数が高くなればタイムラグが改善されます。リファレンス周波数5KHz時のタイムラグであれば送受信の切り替えは、実用上まったく問題ありません。ただ、50MHzAMとはいえ周波数ステップ5KHzでは、使い勝手が悪いと思われます。

 アクティブフィルターをやめて、ラグリードフィルターを使った回路も試してみました。

 時定数を変更することにより大きなハンチングを取り除いて、タイムラグを改善することができました。しかし、残念なことにタイムラグを改善するとVCOの信号純度が悪化して、とても局発として使用できるものではなくなります。

 ループフィルタでは、改善できそうもないので、元のアクティブフィルターに戻して、ソフトウェアで対策することにしました。はじめは、送受の切り替え時のみリファレンス周波数を変更する手法を試したのですが、リファレンス周波数を変更すると内部カウンタがリセットされるようで、さらに大きなハンチングが発生してタイムラグが大きくなってしまいました。
 リファレンス周波数1kHzでも、一度の周波数変更が100KHz程度の周波数変更では、大きなタイムラグが発生しません。よって、455KHzを約100KHzづつ4段階で変更するようにソフトウェアを変更しました。

 大きなハンチングが改善されてタイムラグも250ms程度に短くなりました。受信から送信のリレー制御のタイムラグを200msとして、テストしてみましたが、この程度であれば、なんとか我慢できる範囲です。送信から受信時は、さらに大きなタイムラグがあり、600ms程度かかっていましたが、こちらも4段階で周波数を変更することにより半分程度まで改善することができました。ただ、受信時のタイムラグは、送信部の電源供給をきってしまえば、他局に迷惑をかけることがないので、これ以上の改善は必要なしと判断しました。


ケースへの組み込み 2013-09-19

 リレーでアンテナと電源供給を切り替える回路を追加して、全体の動作試験を行いました。送受の切り替えで受信部のAFアンプの電源を入切するので、LM386が「ブチッ」というノイズを出しますが、それほど、気になるものではありません。

 最終的な全体の回路図です。Sメーターは、LA1600のAGC出力をAVRのAD変換で取り込んで、LCDに表示します。ステップの切り替えは、周波数ステップを1KHzと10KHzに切り替えます。

 ケースは、タカチのYM-200を使用しました。スペースに余裕はありませんが、なんとか収まりました。ただ、ノイズを出すAVRとの距離が確保できないので、受信音は、バラックでテストしたときよりもノイズっぽく聞こえます。

 Sメーターは、LCDの2行目にバーグラフ表示させます。一番後ろの数字は、Sの値を示しています。AGCの電圧を対数変換して表示値を求める必要がありますが、今回は適当に設定しました。SGから-100dBm入力時にS1、-90dBm入力時にS7、-80dBm入力時にS8、-70dBm入力時にS9、-60dBm以上でS+としました。

 ベランダのダイポールアンテナでは、AMでのオンエアは、まったく聞こえないので、FT-817NDをつかって、送受信をシミュレートしてみましたが、普通に使えそうです。