最終更新時間:2016年10月08日 20時09分48秒
[公開:any]
[電子工作/アマチュア無線]
[電子工作/PIC]
[AD9833,DDS,PIC,PIC18F14K50,NE612AN]
前回のDDS-VFOを使った7MHz-CWトランシーバーの製作と同じく、アナログデバイセス社のDDS-ICであるAD9833をVFOに使用したトランシーバーを製作します。バンドは前回と同じ7MHzとしますが、モードはSSBのみとします。
まず、前回と同じようにVFOを作成します。aitendoさんで10個100円で調達した11.2896MHzの水晶発振子からクリスタルフィルターを作成します。よって、IFは約11.289MHzとなります。DDS-VFOから4.28MHz(11.2896MHz-7MHz)を出力するように設定しました。DDS-VFOの回路図やプログラム等は前回のものと同じです。周波数ステップは100Hz単位としました。(・・・目的周波数よりも低い周波数のVFOを使うと目的周波数よりも低い周波数のスプリアスに悩まされます。QRP機なのでなんとかしのげますが、1W以上の出力だと厳しいかもしれません。・・・当然、製作する技術力によりますが・・)
DDS-VFOのテストのために、ブレッドボードに周波数変換、クリスタルフィルタ、検波、低周波増幅を組み立てて7MHzを受信してみました。周波数変換や検波にダブルバランスドミキサーICのNE612を使用しています。DDS-VFOの出力は-18dBm程度と弱くNE612のLO入力には若干のレベル不足となるので、2SK241で増幅する必要がありました。
いつもは、適当に作りながら回路図を作るのですが、今回はSSBということで送受信時の切り替えが複雑になるので最初に回路図を起こして、切り替えメカニズムを考察しました。SSBトランシーバーでは、クリスタルフィルタを送信と受信で共用するために、クリスタルフィルターの前後にリレーやアナログスイッチまたはダイオードスイッチを配置して切り替えている回路が多いようです。今回は海外のSSBトランシーバー製作記事などを参考に、NE612のLOへ入力する信号をVFOとBFOを切り替えることにより検波や周波数変換を機能切り替えする回路を採用することにしました。
VFOとBFOの切り替えは、アナログマルチプレクサの74HC4053を使用します。これで問題があればリレーによる切り替えに変更します。
回路図を新しいものに変更しました。(2016-09-22)
PICから4053への送受コントロールが抜けていました。(2016-11-18)
受信時の周波数変換と送信時の平衡変調を兼ねた回路部分を実装しました。受信時は、NE612の信号入力にアンテナからの受信信号、LO入力にVFOからの4.2MHzを入力することでIFの11.28MHzを出力します。送信時には入力にマイクからの音声信号、LO入力にBFOからの11.28MHzを入力してDSBを出力します。
送信時のDSB信号のスペクトラムです。音声入力はツートーンジェネレータからの信号をコンデンサマイク経由で入力しています。NE612の入力ポートのバランス調整をすることでキャリアサプレッション(搬送波抑圧比)は、約37dBとなりました。音声入力と受信入力を同一ポートにするとキャリアサプレッションが50dB近く得られますが、送信時の受信入力ミュートが必要となります。とりあえず受信入力ミュートが面倒なので(・・・といってもトランジスタを追加するだけですが・・・)NE612の別々のポートを使う接続で行きます。
クリスタルフィルターは、水晶発振子を5個使用します。いつものとおりシリーズ型で作成しました。
インピーダンスマッチングなしのクリスタルフィルター単体の特性です。SSB用なので通過帯域として3KHz程度必要となります。5素子ではサイドの切れが悪いので、2.4KHz程度の帯域を狙って作りました。
DSB信号を入力したクリスタルフィルターの出力スペクトラムです。フィルターの減衰によりさらにキャリアサプレッションが得られて、LSB信号が取り出せるようにBFOを調整しました。キャリアサプレッションは約43dBとなりました。一応はQRP機なのでこのくらいで十分と判断しました。
左側のブロックにアナログマルチプレクサによるVFOとBFOの切り替え回路、右側のブロックにNE612を使用して受信時の検波回路と送信時の周波数変換を行う回路を実装しました。
受信機能を確認するため、LM386(互換品)の低周波アンプを空きスペースに実装しました。アンテナをつないで実際に受信してみましたが、十分な感度があります。フィルターの切れがよくないので、混信はありますが、混み合った7MHzでは市販のトランシーバ−でも同じようなものです。
送信状態に切り替えて7MHzに周波数変換後のLSB信号のスペクトラムを見てみると抑圧したはずのキャリアやUSB信号がやや大きくなっています。また、細かなスプリアスが増えています。何処かから回り込んでいるようです。これを解決しなければなりません。・・・・・ちょっと時間がかかりそうなので、現状はここまでです。
AFの回り込みは、マイク入力が大きかったようで、適正な入力とすると問題はないようです。その他、回路を変更してキャリアサプレッションを改善しました。周波数変換後のキャリアサプレッションは約40dBとなりました。周波数変換前と比べてると多少悪くなっていますが、これで良しとします。
回路の見直しや部品交換を行ったので、基板が汚くなりました。いくつかのブロックは作り変える予定です。受信・送信の基本的動作は問題なく動作します。受信に関しては、信号発生器からの信号による感度測定は悪くないのですが、実際のアンテナをつないでの受信は、やや感度が悪く感じます。
周波数変換後の出力は、-40dBmと小さいので送信出力300mW(+25dBm)を目標にすると、65dBも増幅する必要があります。3段増幅でぎりぎり行けそうですが、全体的な利得配分を見直したほうが良いかもしれません。
DDS-ICのAD9833を使用したVFOは、そのままでは、出力レベルが-18dBm程度と小さいです。以前作成した7MHzCW機のTA7358には、このレベルで問題なかったのですが、NE612のLO入力には、そのままでは使用できません。とりあえず2SK241による広帯域アンプでごまかしていたのですが、やはりLO入力のゲイン不足を感じていました。・・・ということで、AD9833を使用したVFOは安くて簡単なので、アンプを搭載したVFO基板をもう1台作成しました。AD9833の出力を2SK241で増幅して出力レベル-2dBm程度としています。
新しいVFOを使用して受信すると感度も若干上がりました。また、送信部の周波数変換後の出力が-40dBmから-25dBmへと大きくなり、送信出力も大きくできます。古いVFOの時は、終段トランジスタに2SC2078を使用しても300mWがギリギリでした。そのため貴重な2SC1971を使用して300mWを確保しました。新しいVFOでは、2SC1971で楽に1W以上(30dBm以上)が確保できるようになりました。(画像奥は2SC2078の終段回路、手前が2SC1791の終段回路基板)
マイク入力に歪まない程度のツートーンを入力して、20dBカップラーと30dBのアッテネータを介して約-19dBmの出力が得られました。(ピークだと-16dBm近くでるので2W以上はありそうです。ただ、マイク入力が大きいと出力が大きく歪みます。)
受信感度もよくなったのでSメーターも実装しました。SGから-70dBm入力でメーターの振れがフルスケールの7割程度としました。(これでS9に相当する。)
LPFは、7素子のπ型チェビシェフで作成しました。
高調波もばっさりと減衰させることができました。最終的な出力は31dBmとなったので1.25Wのパワーとなりました。予定よりもパワーがあるので、終段のトランジスタを2SC2078に変更するか、パワーを絞る方向で調整する予定です。(500mW程度まで絞る予定です。スペクトラム画像はいずれも20dBのカップラーと30dBのアッテネータで計-50dBとなっています。)
送受信の切替は、マイクからのPTTをPICの入力ポートで読み取り、PICからのリレードライブにより、電源とアンテナ回路を切り替える方法としました。この方法だと、PICで送受が検知できているので、送信時と受信時をそれぞれ別の周波数とすることができます。この機能を利用して受信時のみ周波数を変更できるRIT機能が簡単に実装できます。これですべての回路が完成しました。あとはケースに入れるだけです。
ケースに入れました。ケースはいつものタカチYM-250です。基板は両面テープで張り付けてあります。いつも完成してから思うのですが、このランド方式で作ると実装密度が上がらないので簡単な回路も大きくなります。もう少し、実装密度を上げて作れば良いのでしょうが、確たる理論もなく適当に部品交換しながら作り上げていくため、作業性を考えるとこのくらいのが良いのかもしれません。
偶然ですが、LCDからのバックライトの漏れがSメーターを照らしていい感じになりました。
以下の諸元により変更申請を実施して免許を受けました。これでオンエアできます。