INA228を使用した実験用の電圧・電流モニターの製作

 実験中のリニアアンプの出力を上げるために、DC-DCコンバーターで電源電圧を13.8V以上に上げてテストしています。電圧はテスターでわかるのですが、電流がどれくらい流れているのかわからないので電流計を作ることにします。

RFリニアアンプのテスト風景

 回路図です。電圧・電流の測定のために専用ICのINA228を使用した高精度I2Cディジタル電流・電圧・電力計モジュールをストロベリーリナックスから購入しました。以前、実験用安定化電源の改造でINA226のモジュールを使用したのですが、今回は扱う電圧が60VまでとなるのでINA228のモジュールとしました。出力はスイッチによるオン・オフでもよかったのですが、過電流保護をつけたかったのでMOSFETによるハイサイドスイッチを取り付けます。MOSFETはVGSが±20Vまでなのでツェナーダイオードでクランプします。ドライバ用のトランジスタも耐圧に注意する必要があります。

INA228電圧・電流モニター回路図
INA228電圧・電流モニター回路図

 PICやモジュールの電源は入力する電圧から5Vに降圧しますが、一般的な3端子レギュレーターは入力電圧の最大定格が30Vまでが多くそのままでは利用できません。効率を考えれば降圧タイプのDC-DCコンバーターがいいのですが、これも60Vの入力に耐えるものは多くはありません。仕方がないので余計な電圧をトランジスタで熱に変えるドロッパ方式で降圧します。ツェナーダイオードでクランプするので48V入力の時は48-(9.1-0.6)=39.5Vをトランジスタで熱に変える必要があります。PICやLCDなどの消費電流は30mA前後なので約1.2Wの発熱量となります。

INA228電圧・電流モニター開発風景
INA228電圧・電流モニター開発風景

 トランジスタは手持ちの2SD1828を使用しました。データシートからは、2Wまではヒートシンクなしでも大丈夫です。念のためテープで張るタイプの小さなヒートシンク(1cm角)を2個付けたのですが、それでも48Vを入力するとトランジスタのケース温度が60℃以上まで上昇します。ケースに入れた場合は熱がこもって危険な感じがするので、やや大きめのヒートシンクに交換しました。これでケース温度は約44℃で安定しました。

ドロッパトランジスタの表面温度
ドロッパトランジスタの表面温度

 電子負荷をつないで、24Vで2Aを数分流してみました。出力のハイサイドスイッチに使用しているPチャンネルMOSFETの2SJ380がかなりの発熱です。手持ちの関係で2SJ380としましたがオン抵抗が0.15~0.2Ωと大きいので、2Aでも0.8Wの電力を消費します。これも小さなヒートシンク(1cm角)だったのですが、やや大きめのヒートシンクに交換しました。3Aでは1.8Wとなるのでこのヒートシンクでもかなりの温度となりそうです。5Aでは5Wとなるので連続運転はできません。温度が上がればPdが小さくなるので故障する可能性が大きくなります。とりあえず、実験時の短時間測定に限定ということでこのままとします。(連続動作させるならMOSFETによるハイサイドスイッチをやめて機械的なスイッチにします)
※2SJ380から2SJ334に交換しました。(2021-12-11)

INA228電圧・電流モニター

 完成しました。24Vの3Aを試してみましたが、連続60秒でケース内のにおいが危険な感じです。おそらく長時間はMOSFETがもたないと思います。なお、DC-DCコンバーターは仕様で60V10Aの600Wとなっているので100Wクラスの出力は問題ありません。48Vや24Vで出力50Wクラスのリニアアンプ(効率はおそらく50%前後なので100W近い消費電力)を繋いで連続運転してもほとんど発熱が無いことは確認済みです。(だからといって強制空冷なしで300W以上は難しいと思われます。)

INA228電圧・電流モニター内部
DC-DCコンバーターとINA228電圧・電流モニター外観
DC-DCコンバーターとINA228電圧・電流モニター外観

 INA228の測定は精度が高いです。電圧測定は、AD変換1回280usを256回アベレージングさせて17.7ビットの測定値を得ています。5.5桁のデジタルマルチメーター(但し校正期限は切れている)と数mVの差があるだけです。当然、用途からはここまでの精度は必要ありません。

INA228測定精度
INA228測定精度

 過電流制限は、単に設定した電流値に達すると出力をシャットダウンする方式です。ソフトウェアのループ内処理で過電流検出と出力切断を行っています。ループ内では、電圧と電流測定にそれぞれ70msが必要となり、その他処理を入れて1周期で150ms程度かかります。よって、タイミングが悪ければ150ms程度の過電流が流れる可能性があります。なお、測定精度を落とせばループ時間を短くすることは可能ですが、LCD表示の最小桁が安定しないのでこの設定としています。(16ビットの精度なら20ms程度までは短くできます)

INA228電圧・電流モニター電流制限設定
INA228電圧・電流モニター

 毎度ながら扱う電力が大きなものを製作するとFETを壊します。今回は2SJ380と電子負荷の2個の2SK2233を飛ばしました。電子負荷に48V3Aを入れたらパラのFETがソース・ドレインがショートモードで壊れました。2SK2233のPdは100Wですが、並列なので100W超えもいけるかなと考えたのですが甘かったようです。おそらく放熱が間に合わなくなりジャンクション温度が限界を超えて飛んだと思われます。電子負荷がショート状態となっているので電流制限によるシャットダウンが発生しているのに、動作しないと思って何度も出力ONをやっていたらハイサイドスイッチの2SJ380が飛んでしまいました。2SJ380もソース・ドレインがショートモードで壊れています。

2SK2233の故障
2SJ380の故障

 リニアアンプのテストなどでは長時間の送信は行わないので、3A程度流してもMOSFETはほんのりと温かくなる程度でまったく問題ありません。5A以上流してみたいのですが、リニアアンプのMOSFETが熱で飛びそうなので止めておきます。


ハイサイドスイッチのMOSFET交換(2021-12-11)
 リニアアンプのテストで4A程度流すと2SJ380がかなり発熱してヒートシンクが触れないほどになります。3W以上の熱量なので当然です。この先、5A程度までテストしたいのでMOSFETをON抵抗の小さな2SJ334に交換しました。ソース・ドレイン電圧は60Vとギリギリになるのですが、ON抵抗は29mΩと非常に小さな値です。5A流しても0.7W程度の発熱なので現在のヒートシンクで十分対応できます。交換後に4Aを数分間流してみましたが、ヒートシンクがほんのりとあったかい程度でした。

2SJ380を2SJ334に変更

 PICのプログラムソースです。MPLAB-XとCコンパイラにXC8を使用しています。電圧・電流センサーICのINA228は、以前使用したINA226と異なり、AD変換の読み出すデータが20ビットに拡張されています。このため3バイト読み込んで最後の4ビットを破棄しています。なお、20ビットの精度を得るには測定時間がかなりかかります。ここまでの精度は不要なのでコンフィグレーションで17.7ビットとしています。一般的には16ビット(INA226と同等)もあれば十分かと思われます。電圧・電流以外にも温度も読み出すことができますが、不要なのでコンフィグレーションで無効にしています。

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