MOSFETを使った電子負荷装置の改修

 INA228を使用した実験用の電圧・電流モニターの製作で、2007年に自作した電子負荷のMOSFETを故障させました。48V3A(144W)の負荷をかけたときに飛んでいます。使用していた2SK2233は、許容損失Pdが100Wまでですが、並列なので短時間なら大丈夫と思ったのですがダメでした。おそらく放熱が間に合わずに、ジャンクション温度が150℃を超えたのだと思われます。ドレインとソースがショートモードで壊れています。
 電子負荷の使用頻度は多くはないのですが、無いと困ることもあるので修理します。どうせならということで、新しいMOSFETのTK15J50Dを秋月電子で調達しました。1個115円と2SK2233(@180円)よりも安価でした。今度のは許容損失Pdが210Wなので、これを並列にして負荷容量100W以上を目標とします。

ショートモードで故障したMOSFET
2SK2233とK15J50D

 回路図です。前回は、抵抗分圧により適当な電圧をゲートに加えていましたが、今回は、オペアンプを利用した定電流回路としました。電流検出抵抗を1Ωとしたので電圧=電流で計算が簡単です。ただ、並列なのでその2倍の電流が流れることになります。電圧と電流の測定は、ストロベリーリナックスで調達したINA228モジュールを使います。LCD表示と温度による冷却ファンコントロールにはAVRを使います。負荷電力や温度で、負荷閉鎖する安全回路も考えたのですが、個人使用であり、安いMOSFETなので、壊れたら交換と考えて取りやめました。

MOSFET電子負荷装置回路図
MOSFET電子負荷装置回路図

※電流調整用の電圧を6Vの3端子レギュレーターで安定化しました。これが無いとファンの回転により電圧の微変動がありました。

 AVRは8ピンのATTiny85としました。AVRやオペアンプのLM358を載せた制御回路の基板を作成しました。電流検出抵抗はメタルクラッド抵抗です。25Wなので5Aまで対応できます。並列なので最大10Aまで流せます。

電子負荷制御基板
電子負荷制御基板
電子負荷電流検出抵抗

 ケースは、これまでのものをそのまま使います。電源のスイッチング電源もそのままです。ケース上部にMOSFETを取り付けたヒートシンクや表示部などがあるので、基板との接続はXHコネクタを使いました。それでもケースの開け閉めのために長めの配線が必要となるで内部はごちゃごちゃです。

MOSFET電子負荷内部
電子負荷内部

 下の左は改修前、右は改修後です。秋月電子の温度計を改造した電流計からINA228による電圧・電流測定に代わり、表示も7セグメントLEDからLCDとなりました。7セグLEDの穴を隠すためにスモークのアクリルでLCDごと覆いました。
 ヒートシンクは、インテル純正CPU用から大型のものに取り換えです。CPU用は30~40W程度までの熱容量でしたが、今回のは見た目では100Wクラスまではイケそうです。ネットで見つけて調達したものなので詳細な仕様は不明ですが廃品のUPS用から取り出したものと情報がありました。

MOSFET電子負荷
MOSFET電子負荷

 ヒートシンクには、SANYO DENKIのPWM制御タイプの冷却ファンがついていましたが、風量が少ないので、高速大風量のものに交換しました。だだ、交換したファンは、全開で回すと爆音なので、温度に応じてPWMにより回転数制御を行います。ヒートシンクは筒状になっており、ファンの風が通り抜けて効率よく冷却できる構造となっています。

MOSFET電子負荷の大型ヒートシンク
MOSFET電子負荷の大型ヒートシンク
MOSFET電子負荷の大型ヒートシンク
MOSFET電子負荷の大型ヒートシンク

 MOSFETは、ヒートシンクを挟んで両面にそれぞれ取り付けてあります。手前面には、温度センサーICのMCP9700Aを取り付けてあります。温度検出は、できればMOSFETの表面温度を測りたいのですが、MCP9700Aが125℃までの対応なのでMOSFET近くのヒートシンクに固定しました。
 LCD表示は、電圧・電流とワット数・温度の切り替えとしました。13Vで2Aの25W程度ならヒートシンクは35~36℃(室温23℃時)まで上昇しますが、30℃以上で回転を始めるファンのおかげでヒートシンク温度は、ほぼ一定です。

MOSFET電子負荷の動作確認
MOSFET電子負荷の動作確認

 12V(安定化電源からの配線にAWG22と細い線を使用したので電圧降下しています)で10Aの負荷をかけてみました。120W程度となります。ヒートシンク温度は、画像では36℃ですが、このあと41℃まで上昇しました。

MOSFET電子負荷の動作確認
MOSFET電子負荷の動作確認

 MOSFETのケース温度(厳密にはケース温度ではなく表面温度)は96℃まで上昇しました。MOSFETのデータシートから、このあたりがほぼ限界なので長時間の利用は困難かと思われます。

MOSFETの表面温度

 短時間なら大丈夫だろうと、2SK2233を飛ばした48V3Aをかけてみました。このあとヒートシンクの温度は46℃まで上昇しました。

MOSFET電子負荷の動作確認
MOSFET電子負荷の動作確認

 MOSFETのケース温度(表面温度)は99℃から一気に110℃を超えました。かなり危険な状況なので直ちに中止しました。幸いMOSFETに異常は発生しませんでしたが、150W近い負荷の連続はムリと判断します。

MOSFETの表面温度
MOSFETの表面温度

 13Vと24Vで、それぞれ60Wの負荷をかけて、1時間連続で運転してみました。ヒートシンクの温度は、1℃近く異なります(室温はほぼ23℃)。これは、電流検出用のメタルクラッド抵抗の消費する電力は、常に電流値に比例しますが、MOSFETは、電圧と電流によって、発熱が大きく変化することが原因と思われます。13Vの時は、80Wで連続運転してもMOSFETのケース温度は93~95℃で安定するのに、24Vの時は、70W程度でケース温度が100℃前後となることからも確認できました。

MOSFET電子負荷の動作確認
MOSFET電子負荷の動作確認

 AVRのプログラムです。Microchip Studio(Version 7.0.2542)とCコンパライラはXC8(v2.31)で開発しています。I2Cのライブラリは、Tiny用ならどれでもOKです。今回は、ばんとさんがGithubで公開されているTinyI2CMasterを使用させていただきました。

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※printfで浮動小数点表示ができない場合は、コンパイル時にわけのわからんエラーメッセージが大量に出ることがあります。この場合はこちらを参考にMicrochip Studioをダウングレードする必要があります。