スペアナ(MT8801B)の電源修理

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origin 2010-09-10


 DDS-ICで作るPLL-VFOの実験をこの夏の猛暑の中、冷房もかけずに続けていました。室温が30℃を超える中でスペアナを使用するのは「マズイかなぁ・・・」と思いながらやっていましたが、ある日、いつものようにスペアナの電源を入れると、全く起動しません。
 スペアナはスペアナ機能をオプションで内蔵したアンリツのMT8801Bという無線機テスターです。4万円程度でジャンクとして入手したものですが、動作しないとショックです。このまま本当のジャンクにするにはもったいないので修理にトライしてみます。

アンリツ無線機テスターMT8801B

 メンテナンス性が良く簡単に内部へアクセスできます。まずはセオリー通り電源の出力確認です。
電源は、小さなスイッチング電源と200Wクラスの大きなスイッチング電源が使用されています。小さなスイッチング電源は背面の電源スイッチでオンオフされて前面パネルのソフトスイッチでメインのスイッチング電源の出力を制御する方式です。小さなスイッチング電源は正常に出力がありますが、メインのスイッチング電源は出力制御を強制的にONにしても全く出力がありません。

 ・・・ということでメインのスイッチング電源が故障したようです。定価で数百万円(・・・おそらく500万円以上)する測定器の電源なのでもっとすごい電源(なにがすごいのか解りませんが・・・^^;)が使用されていると思っていましたが普通のスイッチング電源です。
 故障した電源はネミックラムダ社製(現在はTDK-ラムダ社)のスイッチング電源でマルチ出力タイプです。電源の故障原因で多いのは電解コンデンサの容量抜けです。しかし、この電源の電解コンデンサは一次側、二次側ともすべてニチコン社製で外見も異常なくESRメーターで測定してもおかしなところは見られません。こうなるとお手上げです。
 
MT8801B電源ユニット

 交換用の電源を入手しようとして型番から検索するとすでに製造されていないようです。代替機種がありますが130Wクラスまでで200Wクラスは製造されていません。他のメーカーのスイッチング電源を探したのですが、+5Vで25A、+12Vで10A、-12Vで1A、合計200Wという電源は残念ながら見つかりませんでした。

 200Wクラスのマルチ出力電源はパソコンの内蔵電源ユニットでは一般的です。パソコンの電源ならば安く購入できます。とりあえず動作確認のためジャンクショップで捨てるPCケースから250WのATX電源ユニットだけをいただいてきました。


 電圧を間違えないように接続して電源を入れてみるとスペアナは正常に動作します。


 このATX電源ユニットが使えれば安上がりなのですが、残念ながら大きすぎて内蔵することができません。


 薄型の電源ユニットなら収納できます。19インチラックマウントタイプのサーバに使用されているものなら使えそうです。さっそくジャンクで入手しました。


 ATX規格のPCサーバ用なので出力ケーブルがたくさん付いています。分解して必要な本数にしました。その時、出力の電解コンデンサの頭が膨らんで液漏れしているのを発見しました。(やっぱりジャンクでした。)ためしに電源ユニットを動作させてみると12V出力が異常でファンが回りません。5V系にある程度の負荷をかけないと+12Vは安定しないので負荷装置をつかって負荷をかけても+12Vが安定しません。やっぱり2次側の電解コンデンサがおかしいようです。


 CTC社製??の2200uF/10Vの電解コンデンサをESRメーターで測定して見ると標準では0.1Ω前後であるはずが0.5Ω以上とかなり高いESRを示します。日本ケミコン社製の1000uF/16Vの電解コンデンサは、0.12Ω前後と問題ありません。


 ESRが大きな電解コンデンサをとりはずしてコンデンサ容量計で見てみると正常に測定できません。完全におかしくなっているようです。ESRが1Ωを超えるものもありました。 


 交換用のコンデンサを購入するのも面倒なので1Uラックマウントサーバ用の電源ユニットを購入しました。新品か中古かよくわかりませんが、外見はきれいです。出力容量は200Wで故障したものとほぼ同じスペックです。


 出力のケーブルを減らすために分解して、ついでに電解コンデンサを確認すると日本ケミコン社製とルビコン社製で外形には問題ありません。すべてのコンデンサが日本製なので安心です。故障したネミックラムダ社製の電源と比べると作りはあまりよくありませんが、コンデンサの極性チェックもマジックでマーキングされていて、とんでもなく怪しい作りではありません。(最近のPC用電源ユニットは、とんでもなく怪しい作りのものが多いそうです。←ショップで聞いた話ですが・・・)


 スペアナ側は無改造とするため、接続用中継コネクタ基板をエッチングして作成しました。また、電源ユニットの起動は、サブの電源ユニットからソフトスイッチで供給される+5Vでリレーを動作させてATX電源ユニットのパワーオン端子をショートする方法としました。


 故障した電源ユニットのケースを利用して電源ユニットを固定しました。


 純正のケースに収まっているのできっちりと収納できます。


 動作を確認しました。故障前と同じように問題なく動作します。ただ、電源ユニットは、直径5cm程度の高速回転爆音ファンがついています。内部収納なので音漏れは少ないのですが、これまでよりはうるさくなりました。


 アマチュア無線をやったことがある方はよく知っていると思いますが、スイッチング電源は高周波ノイズ元となります。スペアナは、一種の受信機です。つまり高周波ノイズの影響で測定に問題が発生する可能性があります。故障したネミックラムダ社製の電源は、ノーマルモードとコモンモードノイズの対策がしっかりとされていました。PC用の電源はノイズ対策が弱いので心配です。
 もともとスイッチング電源を使用しているので電源以外の所で十分なノイズ対策がされている思います。電源を交換してどの程度影響があるのか平均雑音レベルの性能試験をやってみました。

noize-level.pngaux_noize.png

 マニュアルでは、入力コネクタのMain Input側は10MHz~2.2GHzで平均雑音レベルが-90dBm以下と規定されています。アッテネータの設定を20dBとすべきところを25dBで測定したので5dBを減算しても-91.01dBmと規格値をクリアしています。2.2GHz~3GHzでも-86.32dBmと問題ありません。AUX側も10MHz~2.2GHzにて-119.26dBmと規格値をクリアしています。

avg-noize-level.png

 修理完了です。ジャンクな測定器ですが、私にはこれで十分です。


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