ラジオの製作その6(6石スーパー)

 スーパーヘテロダインのラジオは、「ラジオの製作その4(2ICスーパーヘテロダイン)」と「ラジオの製作その5(4石スーパー)」と進めてきて、いよいよ最終目的の6石スーパーの製作に取り掛かります。

 今回の6石スーパーも電源には単3乾電池2本の3Vを基本に考えます。前回の4石スーパーの時に参考にした書籍「はじめてトランジスター回路を設計する本」には、6石スーパーの一例が回路図で示されていますが、電源が9Vとなっているのでそのまま作っても動作しません。
このため、ブレッドボードで組み立ててバイアス抵抗値等を調整してみます。

 6石スーパーの基本形は、周波数変換、中間周波数増幅2段の高周波部分でトランジスタが3個、低周波増幅で1個、電力増幅で2個の合計6個となっているものが多いようです。今回も、前回同様に高周波部分の3個のトランジスタは、高周波用トランジスタの2SC2786を使用することにします。また、OSCコイル(発振コイル)のほかに、中間周波増幅2段なので、初段IFTコイル(黄色)、段間IFTコイル(白)、検波段(終段)IFTコイル(黒)の合計4個のコイルが必要となります。

ブレッドボードへの仮組

 ブレッドボードに高周波部分の周波数変換部と中間周波数増幅部2段を組んでみました。
 ゲルマニウムダイオードの1N60で検波したものをセラミックイヤホンで聞いてみると良好に受信できます。ブレッドボードでは、中間周波数の増幅2段が発振するかと心配しましたが、耳で聞いている限りでは異常はないようです。

6石スーパーのテスト

 ためしに、トランジスタを2SC2786から2SC2669に変更してみると見事に発振します。バイアス抵抗をとっかえひっかえしても発振は収まりません。トランジスタのベースとIFTコイルの間に5~10pFのコンデンサを接続してようやく発振を弱くすることができますが、完全に止めることはできませんでした。使用するトランジスタによっては、ブレッドボードで発振させないようにするのは難しいのかもしれません。2SC2669のほうが、感度が良いのですが、発振が心配なのでこれまでとおり2SC2786で進めていきます。

 参考までに2SC2786のhfeを測定してみました。コレクタ電流を0.6mAとしたときのhfeは、53と小さな値です。同じコレクタ電流で測定した2SC2669のhfeは117なので、この差をバイアス抵抗等で調整する必要があるのですが、少なくともブレッドボード上では、計算とおりにはいかないようです。

 低周波増幅部と電力増幅部もブレッドボード上に組んでみました。コイル4個とトランス2個をならべると6石スーパーらしくなります。

6石スーパーのテスト

 前回の4石スーパーでは、電力増幅に2段直結増幅回路を使用しましたが、今回は、B級プッシュプル増幅回路です。電源電圧が同じ3Vなので、聞き比べた感じでは大きな差は感じません。ただ、消費電流は4石スーパーの倍以上の9mA程度がながれているので計算上のワット数(mWオーダーですけど)は、今回のものが大きくなるはずです。

 高周波を扱うアナログ回路をブレッドボードでテストすることは、ブレッドボード本来の使い方から外れているかもしれませんが、いきなり基板に部品を半田付けして製作するよりは失敗が少なくなると思います。


回路図

 最終的な回路を決定しました。トランジスタのバイアス抵抗がいいかげんですが、ブレッドボードではちゃんと動作したので問題ないと思います。

6石スーパーヘテロダインラジオ回路図
6石スーパーヘテロダインラジオ回路図

※OSCコイルのアース接続が回路図から抜けていたので修正しました。ご指摘ありがとうございます。→世田谷 S.Tさま(2008-08-06)

 この回路図でAGCをかける所の抵抗値82KΩは最適化できていません。耳で聞いた限りでは、AGCがかかっていることがわかりません。確実にAGCをかけるならもう少し低い抵抗値が良いのですが、全体的な感度低下があるため、これ以上は難しいかもしれません。いずれにしろ、最終的に使用するバーアンテナ等をつないで調整しようと思います。

 PCBEでユニバーサル基板への実装図を作成しました。前回の4石スーパーが安定して動作したので同じような部品配置としてみました。

6石スーパーヘテロダインラジオ基板パターン
6石スーパーヘテロダインラジオ基板パターン

製作

 トータル3時間程度で基板への部品実装ができました。

6石スーパーヘテロダインラジオ基板表
6石スーパーヘテロダインラジオ基板表
6石スーパーヘテロダインラジオ基板裏
6石スーパーヘテロダインラジオ基板裏

※上の画像ではAGC抵抗82KΩが実装されていません。単純に忘れているだけです。^^;

 バラックで接続して受信テストを行いました。アンテナは、千石電商から入手したAM-88というスーパー用のバーアンテナです。コアが大きいので受信性能が良さそうです。乾電池2本をつないで実際に受信しながら調整します。

 3個のIFTコイルを調整して、AM中波帯の上から下までが同じような感度で受信できるように、OSCコイルとポリバリコンの裏のトリマを調整しました。

6石スーパーヘテロダインラジオ動作確認

 異常な発振がでなくてほっとしました。受信感度と選択度は、2ICスーパーよりも4石スーパーよりも良いと思います。夜には、外国の放送局を含めて隙間のないぐらいに受信できます。ただ、ローカル局を受信したときに、音量を上げるとスピーカーからの音が割れてしまうのが残念です。AGCの効きが悪いのかとAGCの抵抗を変更したりしてみましたが、改善されません。AGCは、弱いながらも効いているようです。とりあえず、通常室内で聞く音量では、音の割れは出ないのでこれで良しとします。

ケースの加工
 ケースは、今回も100円ショップのディスプレイケースを利用します。このケースは、いろんな形があるので使いやすいのですが、素材のプラスチックが加工時に割れやすいので注意が必要です。

 また、ドリルで穴を開けると盛大にバリが出ます。スピーカーの音抜け穴を基板をガイドにあけているところですが、内側にはものすごいバリがでます。このケースの透明部分は箱型に整形されているので、内側のバリをリーマーなどで取り除くのが困難です。

 バリをきれいにするには、一度あけた穴より少し大きなドリルで穴を広げてやると多少はきれいになります。画像では、2mmの元穴を2.5mmで広げている途中です。これをやるとガイドできっちりと並んだ穴が多少バラついた状態となりますが、見た目はある程度きれいになります。

完成
 完成しました。ケースに入れると大音量時の音の割れもあまり気にならなくなります。4石スーパーと同じ3Vの乾電池駆動で同じスピーカーですが、音量は圧倒的に6石スーパーが大きくなりました。

6石スーパーヘテロダインラジオ
6石スーパーヘテロダインラジオ
6石スーパーヘテロダインラジオ
6石スーパーヘテロダインラジオ

 消費電流は、無音時に約7mA、室内で聞く程度の通常の音量時に9~10mA程度となりました。単3乾電池で長く動作させることができます。

 スーパー3兄弟です。

2ICスーパー、4石スーパー、6石スーパー
2ICスーパー、4石スーパー、6石スーパー

 感度は6石スーパー>4石スーパー2ICスーパーの順です。選択度は、微妙ですが、6石スーパー>2ICスーパー>4石スーパーかなぁ?。音質は、低周波増幅の専用ICを使用した2ICスーパーが最も聞きやすいです。

 ・・ということで、高周波部分は、6石スーパーとして低周波部分は、TA7368Pを使用すれば一番実用的なラジオができるかもしれません。