油冷式ダミーロードの製作

 送信出力100Wに対応できるダミーロードを作ります。チップの終端抵抗も海外から安く買えますが、大きなヒートシンクが必要で手間とお金がかかります。使用頻度は少ないので市販の抵抗とペンキ缶を使用して油冷式のダミーロードを安く作ります。ペンキ缶はホームセンターで200mlのものが193円でした。抵抗とコネクタは秋月電子で酸化金属皮膜抵抗(3W1kΩ)20円のものを20本、パネル用UHFコネクタ100円を調達しました。

 ペンキ缶はフタにコネクタ用の穴をあけます。抵抗は固定するために銅の薄板のあまりものを使いました。銅板は缶に入る大きさの円形にハサミで切りだして抵抗を差し込む穴を20個あけます。抵抗を20本差すのに難儀しますが一本ずつ入れていけば何とかなりました。

油冷式ダミーロード

 リード線が短くなるようにはんだ付けします。はんだ付けが完了したらテスターで抵抗値を確認します。1kΩの20本パラできっちり50Ωとなりました。

 銅板の切れ端を使って、はんだでMコネクタのついたペンキ缶のフタに固定しました。高周波的にはアース側の接続方法が良くありませんが、オイルにある程度沈めたいのでフタからの距離を取りました。

油冷式ダミーロード
油冷式ダミーロード

 コネクタを介しての抵抗値も50Ωで問題ありません。SWRアナライザーでみてみると7MHzでSWRが1.01と十分です。

 抵抗の定格電力は3Wです。20本並列なので60WまでOKのはずです。無線機をつないでパワーをかけてみました。最初は50Wです。CWで1分間送信してみると恐ろしいくらいに発熱します。とても素手では触れません。次にハンディファンで完全に熱を冷ましてから、100Wをかけてみましたが、20秒ほどで妙なにおいがするので止めました。とても触れません。はんだが溶けたのではないかと確認しましたが大丈夫でした。

油冷式ダミーロード
油冷式ダミーロード

 スペアナとリターンロスブリッジを使って特性を見てみました。ダミーロードは空のペンキ缶に入れてあります。黄色いトレースは市販のBNC終端抵抗で紫のトレースが製作したダミーロードです。製作したものは30MHzを超えるとリターンロスがだらだらと上昇します。50MHzでリターンロスが-31dBなのでSWR1.06になります。HFでの利用を予定しているので特性としては問題ありません。

油冷式ダミーロード

 冷却用のオイルはホンダのG1という4サイクルエンジンのバイク用のオイルです。半端に余っていたものがあるのでこれを利用します。ペンキ缶の9割程度まで入れます。熱で膨張するので多少空間を用意します。

 製作したダミーロードをオイルに入れてふたをしっかりと閉めました。Mコネクタの構造がわかりませんが、横に向けた程度ではオイルは漏れてきません。テスターで測る抵抗値は50Ωで変化ありません。再びスペアナでリターンロスを見てみると、オイルに浸さない時よりも特性が悪くなっています。50MHzで-23dBなのでSWR1.14程度となります。HF帯のSWRは1.1以下におさまっているので良しとします。

油冷式ダミーロード

 完成した油冷式ダミーロードにパワーをかけてみました。100Wで1分かけてみましたが、ペンキ缶の上部が温かくなるだけです。ペンキ缶の膨張もありません。しかし、ペンキ缶を振ってオイルを混ぜてみるペンキ缶がかなりの熱さになります。抵抗はオイルの上部にあるので対流がうまくいかず冷却がうまくいっていない可能性があります。
 オイルは鉱物油なので電気的に特性を乱す成分が入っているかもしれません。また、バイク用なのでギアオイルとクラッチオイルを兼ねていることからベースオイルになんらかの添加物が入れられている可能性もあります。過去乗っていたバイクの油温は水冷エンジンで90℃、空冷エンジンで100℃程度まで上昇してもまったく問題なかったので、ペンキ缶が素手で触れる程度の温度ならまったく問題ありません。また、オイルの発火点は300℃以上あるので燃えることもありません。ただ、オイルの対流が良くないので、100W連続1分以上は手動でペンキ缶を振ってオイル拡散を行ったほうが良さそうです。

 あらためてスペアナでどこまで使えるのか測定してみました。500MHzまでの測定結果です。下の画像のトレースは黄色がBNC終端抵抗、紫が以前製作した10Wまでのダミーロード、水色が今回製作したものです。430MHzでリターンロスが-15.78dBなのでSWRは約1.39となり使えないことはありません。

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