IRF510を使ったHFリニアアンプの試作

 28MHz-QRP-AMトランシーバーで利用できるHFリニアアンプを作りたいので終段の石を検討しています。古いネット記事を参考にIRF530やIRF610、IRFZ24Nなど色々と試していますが、その中でもリニアアンプの製作例の多いMOSFETのIRF510が1個100円以下で購入できたので試作してみました。

IRF510
IRF510

 回路図です。ネットの情報を参考に一番シンプルな回路としました。AMトランシーバーの出力1W(無変調時)を10Wにするために10dBの利得が必要です。さらにAMなのでアンプの性能としては4倍の40Wまでは出力できる必要があります。IRF510のシングルでは厳しいのでプッシュプルの構成とします。

IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ回路図
IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ回路図

 基板をPCBEで設計して、CNCフライス盤で加工しました。

IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ基板パターン
CNCフライス盤で作成したIRF510 プッシュプル RFリニアアンプ基板

 入出力は、メガネコアによるトランスでインピーダンス変換します。メガネコアの1ターン側は、0.3mmの銅板で作ったパイプを通して作りました(末尾に作成方法を追記)。入力は、最終的に1:1でマッチングがとれました(画像は4:1)。HF帯の低い周波数ではリターンロスが大きいですが、28MHzではSWR1.5以下です。出力は1:4としました。

IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ 入力トランス
入力トランス
IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ 出力トランス
出力トランス

 部品数は少ないです。NFBのパターンも用意したのですが使用しません。電源電圧18V、アイドリング電流200mA(FET2個の合計)として、28MHzの5W入力で目標の40W以上が得られました。効率も60%以上と悪くありません。3分間連続送信しましたが、ヒートシンクが逆さまな状態では、放熱が厳しいようでFETの表面が触れないほど高温になります。

IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ
irf510 push-pull linear amplifier
IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ

 バンド別に電源電圧を変えて出力を計測した結果です。入力はすべて5W(FT-817の最大出力設定)のCW、アイドリング電流は200mAです。24Vの21MHz以下は、IRF510のPdを超えた出力なので一瞬の計測結果です。18MHz以下は恐ろしくて計測していません。また、7MHz以下は入力の整合が取れないので計測していません(ほとんどパワーが出ない)。クラニシのアンテナチューナーNT-616で測ると、電源電圧18V、28MHzで5WのCW入力時にちょうど50Wの表示となりました。

IRF510 プッシュプル RFリニアアンプバンド別出力一覧表
KURANISHI NT-616 NETWORK TUNER

%%測定値には高調波が含まれています。LPFを通すとこの値の4~7割程度の出力となります。%%

 28MHzの入出力特性です。電源電圧は18Vです。リニアなのは20W弱まででしょうか。その後の出力はだらだらと上昇します。ツートーンを入れてIMDを見てみるとピーク37dBmでIM3cが30dB弱です。シングルトーンに換算すると同じく20W弱で直線性がなくなるとみてよさそうです。AM用の定格出力10Wのリニアアンプとしては微妙なところです。

IRF510 プッシュプル RFリニアアンプ入出力特性グラフ

 電源は、安定化電源の出力13.8VをDCーDCコンバーターで昇圧しています。アマゾンで1000円程度で購入したDCーDCコンバーターモジュールです。スペックでは最大250Wまでとなっていますが最大電流は6Aまでなので、18Vでは100Wまでしか確保できません。アンプの効率50%とすると最大出力は50Wまでしか対応できません。なお、このモジュールの変換効率はかなり良いようで発熱が少ないです。28MHzで40W出力時の電力70W程度(18Vで4A)では、モジュールを取り付けたヒートシンクがほんのりと温まる程度です。ただ、DCーDCコンバーターなので電源に重畳するスイッチングノイズが大きいです。スペアナで確認すると基本波の上下120kHzに大きなスプリアスが出ます。

DC-DCコンバーター
DC-DCコンバーター出力ノイズ

 このままでは利用できないので、電源ラインに解体したスイッチング電源から取り出した大きなチョークコイル(磁性体の詳細は不明)を入れました(基板の外に飛び出している大きなコイル)。これでスプリアスは取り除くことができました。


 メガネコア(フェライトコア)の1ターン側は銅パイプと基板で作ると変換効率が良いトランスとなります。銅パイプのみで作る方も見えますが参考までに作成方法を紹介します。
 コアの穴に合わせた基板を作ります。基板は四角く切り出すだけなのでそれほど大変ではありませんが、穴の位置と大きさについては、ある程度の精度が必要となります。今回はCNCフライス盤で加工したものを用意しました。銅パイプとなる銅板は0.3mmの薄板なのでカッターやハサミで円筒となるサイズ(長さ:コアの長さ+基板2枚の厚さ+2mm、幅はコアの円周)で切り出します。コアの穴の大きさよりも少しだけ径の小さなドライバーを用意します。

RFリニアアンプ入出力トランス
RFリニアアンプ入出力トランス

 ドライバーに銅板を巻き付けてパイプを作ります。コアや基板の穴よりも少しだけ緩めに作ります(円周で作ったものを少し重なるようにすれば円周よりも少しだけ小さなものができる)。

RFリニアアンプ入出力トランス
RFリニアアンプ入出力トランス

 銅板を半田でパイプ形状で固定します(これは無くても問題ないと思う)。パイプをコアに通して基板で固定します。

RFリニアアンプ入出力トランス
RFリニアアンプ入出力トランス

 両側の基板とパイプを半田で固定します。その後、片側の基板の中央を削って分離して1ターンを作ります。LCメーターなどでインダクタンスを確認すれば安心です。小さなメガネコアも同じ方法で作成します。

RFリニアアンプ入出力トランス
RFリニアアンプ入出力トランス

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