PICを使ったトランジスターhfeメーター

製作まで一気に紹介しているので画像が多く重たいコンテンツとなってます。

構想
 「ラジオの製作その5(4石スーパー)」で、ラジオを作っています。このラジオは、受信周波数帯の上側と下側で感度が異なり、上側では若干の発振気味になっています。
これは、自分の設計が悪いのではなく、使用しているトランジスタの2SC1815GRのftが低い割りにhfeが大きいことが原因だと部品の責任にしています。^^;

※hfeは小信号増幅率といって交流の増幅率です。今回測定するのは直流増幅率なので正確にはhFEと書かなくてはならないです。・・が、以下面倒なのでhfeと書きます。なお、現在の小信号用トランジスタは、hfeとhFEは、ほぼ等しいらしいです。

 ・・・ということで高周波用トランジスタをいくつか調達しました。

高周波トランジスター
高周波トランジスター

 ラジオの周波数変換部と中間周波数増幅部に、調達したトランジスタを使おうと電流帰還型増幅回路のバイアス抵抗値を計算してみると、hfeが幅を持っているため、なんだか面倒です。大体のところで良いのでしょうが、せっかく用意したトランジスタを使っても発振気味なのは直りません。^^;←設計が悪いのは棚に上げております。

設計
 今回の件は別にしても、やっぱり、個々のトランジスタのhfeがわかったほうが、回路設計は楽だと思います。昔は、乾電池と抵抗2本とテスターだけでhfeを実測していた記憶もあるので、簡単なhfe測定器でも作ってみるかとインターネットでhfeの測定を検索してみるといくつか見つかります。

*トランジスタなどの選別やペア組(自作で遊ぶオーディオの世界へようこそ!さん)
*トランジスタの選別(Hfe測定冶具の製作)(kana-net home pageさん)
*hFEの測定(電子工作etcさん)
*トランジスタhFEチェッカーの製作(ブレッドボードラジオさん)
*デジタルマルチメータ MY-68(秋月電子)

 一番最後のデジタルマルチメータは邪道かもしれませんが、hfeも測定できるマルチメータがこの値段なら「買い」かも知れません。^^;

 ・・で、これらのサイトを参考にさせていただくとhfe測定のキモは、コレクタ電流にありそうです。・・←よく理解していませんが・・^^;
 ベースへのバイアス抵抗を可変にしてベース電流を調整することで、コレクタ電流を一定化し、常に同じコレクタ電流でhfeを計算する方法がよさそうです。一方、ベースやコレクタにかける電圧は、コレクタ電流と比べてhfeに与える影響が少ないようです。今回は、5Vの固定電圧で測定するものを考えます。

 考えた回路がコレです。

トランジスターHFEメーター回路図
トランジスターHFEメーター回路図

※NPNとPNPの切り替え部分を変更しました。(2008-07-07)
※ベースのバイアス抵抗の可変抵抗を500KΩから1MΩに変更しました。(2008-07-19)

 ベース電流Ibとコレクタ電流Icを抵抗の両端の電圧からもとめてhfeをhfe=Ic/Ibから求める方法です。電流(電圧)計測は、PICのAD変換ポートで読み取り、計算結果は3桁の7セグメントLEDをダイナミック点灯で表示します。
 ベース電流Ibは、バイアス抵抗が47KΩ~1047KΩなので4.8μV~106μVとなります。コレクタの電流制限抵抗は、100Ωなのでコレクタ電流Ibは50mAまで流せます(当然、ベース電流とhfeに応じた電流です)。hfeの表示が3桁までなのでhfeの計測制限は999までとなります。

 PICでのhfe計算は、実際の電流値に換算して計算するのではなく、AD変換で得られた10ビット値(0~1023)で直接計算するようにしました。これによって、AD変換のリファレンス電圧である電源電圧に左右されずhfeを計算することができます。また、切り替え表示するコレクタ電流は、電源電圧を5V固定で計算しているので、実際の電源電圧が異なれば誤差がでます。でもコレクタ電流は同一条件で比較するための指標に近い扱いですからこれで良しとします。

 RA4ポートには、表示の切り替えスイッチをつけます。このスイッチでhfe、またはコレクタ電流の表示と切り替えることができます。

 NPNとPNPの切り替えは、トランジスタの端子をVccに接続するかGNDに接続するかを切り替えることにより対応します。

ブレッドボードでの実験
 ブレッドボードでテストします。2SC1815Yのhfeを測定中してみると160となりました。2SC1815GRでは、250近くを示します。なお、この2SC1815シリーズは、コレクタ電流を変化させてもhfeは大きく変わることはありませんでした。

トランジスターHFEメーターの試作

 表示の切り替えスイッチ(トグルスイッチ)をコレクタ電流にして可変抵抗で調整し、2.0mAと10.0mAにセットしてみました。

 多段増幅回路などでAGCをかけるトランジスタは、コレクタ電流に応じてhfeが変化するものが使いやすいと書籍には書いてあります。

 手持ちのトランジスタのデータシートを眺めて、コレクタ電流変化でhfe変化の大きなトランジスタとして2SC460があります。

2SC460って、数年で電極のメッキが酸化して接触不良を起こす有名なトランジスタです。^^;問題になったのは20年近く前のことだから、今のものは対策されたものだろうと通販で取り寄せてみたら、トランジスタの足が酸化で若干黒くなったものがありました。大丈夫かな?

 2SC460のデータシートの抜粋です。コレクタ電流によってhfeが大きく変化しています。

 実際に測定してみました。コレクタ電流0.5mAの時のhfeは、75となりました。

 次に、ベース電流を調整してコレクタ電流を5.0mAとしたときには、hfeは120となりました。

 コレクタ電流によりhfeが変化することが確認できます。データシートのグラフよりは大きなhfeが計算されますが、個体差の範囲内でしょう。

製作
 いつものようにユニバーサル基板を使用することにして、pcbeで実装配線図を作成しました。
部品数が少ないのであまり考えず、いい加減な接続です。電源もLCメーターなどで使用しているACアダプタがそのまま使えるように3端子レギュレータを実装します。一応、ACアダプタ等の極性を気にせずに使用できるようにブリッジも付加しておきます。

トランジスターHFEメーター基板パターン

※この実装配線図は、上のほうの回路図と接続が異なっています。実装配線は、ジャンパーが少なくなるように接続し、ブレッドボードでの回路(=回路図)と異なる部分は、ソフトウェアで対応するようにしています。よって、下のほうにあるプログラムで動作させるには、この実装配線図とおりの接続にする必要があります。ご指摘ありがとうございます。→Nobuさま(2008-07-31)
※NPN/PNP切替スイッチの接続が間違っていました。ご指摘ありがとうございます。→吉村さま(2009-03-26)

 早速、半田付けしました。裏面と表面。実は、この画像では、上の実装配線図と異なっています。最初は、NPNとPNPの切り替えを単純にエミッタとコレクタの入れ替えで考えていたのですが、よく考えると流れる電流の方向が逆になるので、電源を入れ替えるのが正しい方法と気が付きました。(実装配線図と回路図は修正済みです。)

 基板上に測定端子としてシングルICソケットを直接半田付けしてテストしたところ良好です。ただ、この測定端子は、エミッタ接地のNPN専用となります。

トランジスターHFEメーター基板裏
トランジスターHFEメーター基板表

 ケースに入れました。最近は、7セグメントLEDの部分を開口するのがメンドーなので、透明ケースの使用が多くなってます。このケースは、秋月電子のポリカーボネートケースの中サイズです。電動ドリルで穴を開けてもひびが入ったりしないので使いやすいケースです。

 トランジスタの測定端子は、基板上と同じくシングルICソケットを使用しました。耐久性はあまりなさそうですが、接触が悪くなったら新しいものに交換する方法でいこうと思います。

トランジスターHFEメーター
トランジスターHFEメーター

コレクタ電流の実測(2008-07-08追記)
 AD変換のリファレンス電圧である電源電圧の実測で補正した指数をコレクタ電流の計算に使用しているのでかなり正確な値になっています。

コンプリメンタリペアトランジスタのhfe実測テスト
 PNPも測定できるようになったので・・・・
「やってみたかったこと」→コンプリメンタリのペアトランジスタのhfe測定を試します。コンプリメンタリの定義は「特性が似たもの」ということらしいですが、hfeが大きく異なるようでは、当然使いにくいと考えられます。

 2SC1815と2SA1015、2SC2120と2SA950のペアトランジスタです。この2種類は、B級プッシュプルなどの小信号の低周波増幅回路でよく使われる良く使われるコンビです。

コンプリメンタリ ペアトランジスター
コンプリメンタリ ペアトランジスター

 以下いずれのトランジスタも、コレクタ電流を10mAに固定してhfeを測定します。画像は、左がコレクタ電流、右がhfeです。

2SC1815(GRランク)の測定

2SA1015(GRランク)の測定

2SC2120(Yランク)の測定

2SA950(Yランク)の測定

 ・・・・結構、差があります。こんなもんでしょうか?。いずれの組み合わせも10%以上の差があります。この差が問題になるかどうかは、よくわかりませんが、性能を求めるときは、沢山のトランジスタから特性の似た(hfeの近いもの)を選択したほうがよさそうです。

発振対策(2008-07-08追記)
 低周波用トランジスタは問題なく測定できたのですが、高周波用トランジスタを測定するとかなり大きなhfeが測定されます。コレクタ電流も計算より多く流れてその値も大きく変動します。
2SC2786を測定するとhfeは590となります。本来は100前後。

 基板上にある測定端子にトランジスタをつなげば、高周波用トランジスタでも正常に計測できます。

 オシロスコープでトランジスタのエミッタ・コレクタ間の波形を見てみると、見事に発振しています。さずが、高周波用トランジスタです。^^;

 測定端子の裏のエミッタ・コレクタ間に0.1μFのコンデンサを発振防止に取り付けて正常に計測できるようになりました。

ソフトウェア
 PIC16F88に書き込んだソフトウェアです。mikroCで開発しました。
 ・・開発といっても、7セグメントLEDにAD変換の結果をちょこっと計算して表示するだけなので、以前に作った「PICを使った温度計・湿度計の製作」とほとんど共通です。NPNとPNPの切り替えは、PICでは感知できないので、ベース電圧の検出値vb1とvb2の値により判別させています。

アイコン

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