si5351aを使用した7MHz-QRP-CWトランシーバーの製作

最終更新時間:2017年02月16日 14時22分40秒

[公開:any]

[電子工作/アマチュア無線]
[電子工作/PIC]
[PIC,PIC18F14K22,si5351a,TA7358P]

origin 2016-12-31


  • 大晦日から始めました。完成までしばらくかかります。(2016-12-31)
  • 単純な回路なので受信回路と送信回路を一気に作りました。(2017-01-10)
  • キークリック音の改善に苦労しています。(2017-01-22)
  • 完ぺきとは言えませんが、キークリック音を改善しました。(2017-02-10)

 1年ほど前から、ネット上のあちこちのサイトで話題になっていたシリコンラボのI2Cクロックジェネレーターのsi5351aを遅ればせながら入手しました。出力できる周波数は2.5KHz〜200MHzと広範囲で、なおかつ、DDSチップよりも安い(秋月電子で購入すればチップ単品で150円。DIP化されたモジュールで500円)と話題になるには十分なスペックです。これをVFOとして7MHzのCWトランシーバーでも作るかとブレッドボードでテストしました。si5351aに関してはJR1PWZさんのサイトでかなり詳しくレポートされています。その中で周波数変更に伴うスプラッターで受信音にプチプチ音の影響が心配との指摘があります。TA7358を使用した受信回路でテストしたところロータリーエンコーダーを回すと確かにプチプチ音が入ります。受信音が静かな状況ではかなり明瞭です。一応、比較のため、DDSのAD9833を使用したものでもテストしましたが、当然ながらDDSではまったく問題ありません。


 プチプチ音は気になりますが、値段につられてsi5351aモジュールをまとめ買いしたので、このまま進めます。CW用に狭帯域のフィルターを使用すると受信音が静かになってプチプチ音が気になるので、クリスタルフィルターは、水晶発振子3個のブロードなものとしてみました。こうすればにぎやかな7MHzの受信音に紛れてプチプチ音が気にならなくなります。(解決法の方向性が間違っていますが・・・)
 送信回路は、周波数変換なしでsi5351aのから直接7MHzを出力させて増幅する構成でテストしました。si5351aは、3ch出力できるので受信用局発としての17MHz(IFは10.245MHz)と送信用の7MHzを同時発振の状態としたのですが、当然のことながら受信に送信用の7MHzがかぶってしまいまともに受信できません。このため、送信用の7MHzをやめて、BFOの10.245MHzを同時に発信させた状態でテストしたのですが、ブレッドボードの環境では細かなスプリアスが出て受信への影響がありました。このため、BFOは水晶発振として、送信時(フルブレークインなのでキーダウン時)に受信用局発を止めて送信用の局発を出力する方式でいくことにします。


 si5351aモジュールによるVFOは部品点数が少なく簡単に作成できます。受信用局発と送信用局発でそれぞれに対応したローパスフィルターを実装するため2chを使用しました。(同時発振は行いません)
 si5351aの制御はハードウェアでI2Cを実装しているPIC18F14K22を使用しました。si5351aの制御方法が非常に複雑でデータシートだけではお手上げでした。Computer Radio RF Techさんのサイトで詳しい解説があるのでこれを参考にしてようやく理解できました。ソースコードもGitHUBにあるものを加工して対応させました。(AVRのソースコードはGNUライセンスで公開されたものが多いのでAVRを使用すればよかった・・・)


 受信用局発のスペクトラムです。アッテネーターが20dB入れてあります。左は60MHzまでの高調波、右はスパン5MHzでみたスプリアスです。LPFを手持ちのアキシャルリードタイプのインダクタを使用して適当に作ったので高調波が落とし切れていませんが、このレベルでは受信には全く影響がありません。近接でやや大きめのスプリアスがありますが、これも受信には影響は少ないと見ました。


 送信用局発のスペクトラムです。左は30MHzまでの高調波、右はスパン5MHzです。発振周波数が低くなるためか受信用よりもさらにスプリアスが少なくなります。なお、si5351aの出力インピーダンスは50Ωとなっており、出力レベルも+10dBm程度と大きな電力が得られます(これはソフトウェアで調整できます)。今回は送信出力を1W程度(30dBm程度)とするので、送信回路は2段の増幅で余裕です。


 APB-3で狭帯域スペクトラムを確認しました。左は受信用局発、右は送信用局発でスパン100kHzです。



2017-01-10

 全体の回路図です。キーダウンをPICで読み取ってsi5351aの出力チャンネル(同時に発振のON/OFFも)を切り替えることで送受信を切り替えます。フルブレークインのテスト環境を作り、送受信の切り替えをシミュレートしながら送信用局発の出力を市販無線機でモニターしてみましたが違和感はありませんでした。

回路図を変更しました。サイドトーンはPICのPWMにより生成することにしました。(2017-01-08)

回路図を変更しました。キー入力と送受切り替えをPICを介して行うようにしました。(2017-02-10)



 受信回路を作成しました。いつもとおりランド方式です。5cm角の基板にブロックごとに実装しています。こうすると回路に問題がある場合はブロック単位で切り分けて対応できるので失敗が少なくなります。アンテナをつないで実際に受信してみました。まず、周波数変更に伴うプチプチ音を確認しました。ロータリーエンコーダーを勢いよく回すとプチプチと聞こえます。聞こえますがあまり気になりません(これは個人の感覚なのであまり参考にならないでしょう)。クリスタルフィルターは、3素子で構成しましたがコンテストなど混みあった環境以外では問題は少ないと思います。3素子としたことで感度の低下が少なく非常に高感度の受信機となりました。AGCが無いので強い局が出てくると爆音となってスピーカー音が歪みます。


 アンテナをつないで空き周波数をモニターしているときに周波数変更したときのプチプチ音の波形です。ロータリーエンコーダーを素早く連続して回してみました。スピーカー出力を見ているので振幅は参考になりませんが、ご覧の通りパルス状のノイズが出ています。この程度ならAFでフィルタリングも可能と思われます(←対応予定はありませんが・・・)。なお、意図的に連続してロータリーエンコーダーを回すとノイズが気になりますが、通常の利用では意識するほどのものではないと思っています。
 

 送信回路も作成しました。si5351aの出力が+10dBm(10mW)近くあるので、2SK241の前置増幅と2SC2078の終段増幅の2段で余裕で+30dBm(1W)以上になります。5cm角の基板1枚に送信回路すべてが実装できます。出力は終段トランジスタのベース抵抗を33Ωから75Ω程度で調整すると200mW弱から1W程度まで変更できます。今回は+30dBm(約1W)としました。


 エレキーをつないでフルブレークインの動作を確認してみました。FT-817で受信してみると受信音にちょっと違和感があります。受信音の先端にノイズがのったような感覚です。送信出力をオシロスコープで確認してみました。”CQ”を打った時の送信波形です。信号の先端でヒゲのようなパルス性のノイズが見られます。この影響でしょうか?。(右の画像は短点を拡大してみました。)



2017-01-22

 参考までにFT-817のキーイング波形を見てみました。立下りは相違は見られませんが、立ち上がりは滑らかです。立ち上がりを拡大してみるとフルパワーになるまで4ms程度かかっています。キークリック音を和らげるために意図的に遅延させていると思われます。


 ソフトウェアで対応できれば良いのですが、今の仕様ではむつかしそうです。送信部の電源の立ち上がりも穏やかにしてみたのですが、フルブレークインの動作に違和感が出ます。キーダウンをPICが読み取ってからsi5351aの出力を切り替えて7MHzの信号出力を行うのですが、この信号出力と送信部電源の立ち上がりが同時に行われており、これが原因となっていると思われます。とりあえずsi5351aの出力に抵抗とコンデンサでスナバ回路みたいなものを追加して入力を穏やかにしてみました。
 立ち上がり部分に見えていたヒゲのようなものはかなり改善されました。FT-817で受信してみるとかなり改善されています。ただ、キークリック音が気になります。7MHzを受信していると同じようなキークリック音が聞こえる局もいますので、この程度なら使えないことはないと思います。



2017-02-10

 やはり、キークリック音が気になります。回路を変更してフルブレークインの動作を見直しました。エレキーなどのキー入力をPICへ直接入力し、送信部への電源供給をPICでコントロールできるようにしました。また、si5351aの周波数変更と送信部への電源供給のタイミングを最適化するようにソフトウェアを書き直しました。また、終段のコンデンサ容量を調整してフルパワーまでの遅延を入れました。これによりキークリック音がかなり改善できました。 


 後は、ケースに入れるだけです。
 


 以下の諸元により変更申請を実施して免許を受けました。これでオンエアできます。


 


 PICでのソースコードの問い合わせが何件かありましたので掲載します。MPLAB3.10とXC1.40で作成しました。ソースは、メインプログラムのmain.c、液晶制御のlcd.cとlcd.h、si5351a制御のsi5351a.cとsi5351a.hと別れています。si5351aの出力は2chのみを使用するようにしてあります。

  • メインルーチン main.c(183)
  • LCD表示(HD44780互換)ヘッダファイル lcd.h(159) 
  • LCD表示(HD44780互換)描画プログラム lcd.c(150)
  • si5351a制御ヘッダファイル si5351a.h(167)
  • si5351a制御プログラム si5351a.c(180)

 

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