si5351a-VFOを使用した50MHz-AMトランシーバーの製作

 50MHzAMトランシーバーを作りました。全体回路図です。混合、周波数変換、振幅変調にはDBM(ダブルバランスドミキサーIC)のNE612を使用します。秋月電子で販売中のSA612は製造メーカーが違うだけで同じ製品とのことです。はじめSA612を調達してSOPパッケージをDIP化する基板を介して使用してみたのですが周波数変換部でスプリアスが多く悩まされました。DIPパッケージのNE612に変えると問題ないことから、使用したSOP→DIP化基板に問題があるかもしれません。終段増幅にFETのRD06HVF1を使用しました。いつも参考にさせていただいているJA2NKDさんのサイトで紹介のある回路をそのまま利用させていただきました。

50MHz-QPR-AMトランシーバー回路図
50MHz-QPR-AMトランシーバー回路図

 前回作成したsi5351a-VFOを使用して受信回路を作成しました。クリスタルフィルターは帯域6KHzとしました。AGCは初段の高周波アンプにかけると効果が大きいのですが、とりあえずIF増幅2段のみです。受信感度は信号発生器からの-120dBmがなんとか聞き取れますがそれ以下は苦しいです。土曜日の夜を待って6mAMロールコールを実際に受信してみましたが問題なく受信できました。AGCも特段問題ありません。Sメーターは調整回路を省略しましたが-70dBmでフルスケールの8割指示となり、目安としてはちょうど良い状態となりました。

50MHz-QPR-AMトランシーバーVFO
50MHz-QPR-AMトランシーバーVFO
50MHz-QPR-AMトランシーバー受信部
50MHz-QPR-AMトランシーバー受信部

 マイクアンプとNE612による振幅変調回路を作ってテストしました。5cm角のベタ基板に5mm角のランドを瞬間接着剤で張り付ける方法で作りました。この方法は、ブロックごとに作成するのでそれぞれのブロック単体の性能評価がやりやすいです。また、各ブロックを繋ぎながら最適化していくので失敗も少なくなります。はじめからきちんと設計できる技量のある方は基板化して美しく作ることができるのでしょうが私には困難です。

ベタ基板にランド工法
ベタ基板にランド工法
50MHz-QPR-AMトランシーバーAM変調基板
50MHz-QPR-AMトランシーバーAM変調基板

 海外のサイトを参考にして作成したマイクアンプと振幅変調回路は、NE612への入力レベルが高くなりすぎてスプリアスが多くなりました。このためマイクアンプ1段とNE612へのシングルエンド入力となる普通の回路に作り変えました。振幅変調回路単体では問題なくなったのですが後段の周波数変換(12.288→50.5MHz)で細かなスプリアスが多く発生して苦労しました。

AM変調回路
AM変調回路
AM変調波形
AM変調波形

 周波数変換後の前置増幅回路までのテストと終段増幅のテストを行いながらいくつかの基板を作り直しました。送信関係のブロックは部品配置やベタ基板の並べ方でもスプリアスが増えたりして調整に手間がかかります。RD06HVF1の終段増幅は安定してパワーが出ます。10dBm入力で3W程度まで余裕でした。

50MHz-QPR-AMトランシーバー
50MHz-QPR-AMトランシーバー
50MHz-QPR-AMトランシーバー
50MHz-QPR-AMトランシーバー

 今回は4枚のベタ基板を廃棄です。振幅変調や周波数変換のブロックは試行錯誤して半田跡で汚れたので作り直したいのですが面倒なのでそのままです。

 ケースは100均一で購入したポリプロピレン製の小物入れです。製品名(SIKIRI 0)からわかりますが中に仕切りが無いタイプです。中が透けて見えるのでLCDやSメーターの穴あけが必要ありません。失敗しても100円です。

100均ポリエチレンケース SIKIRI 0
100均ポリエチレンケース SIKIRI 0

 基板は両面テープで止めました。ケースには5cm角のベタ基板は3×4の12枚まで入れることができます。基板の並び方は変な形ですがスプリアスを少なくして安定して動作することを優先します。ケースは素材が柔らかいので穴あけ加工は楽ですが穴の周辺にバリが出やすいです。LCDもSメーターも透けてよく見えます。終段の放熱板は外に出すことも考えましたが、とりあえず表裏に穴をあけて空気の流れを作りました。出力を1Wとして60秒ほど送信するとケースが溶けそうなくらい発熱します。放熱板のサイズ的にも苦しいので出力は0.5Wとしました。AMでラグチューすることもありませんが、もし連続送信するときはフタを開ければOKです。

50MHz-QPR-AMトランシーバー内部
50MHz-QPR-AMトランシーバー内部
50MHz-QPR-AMトランシーバー外観
50MHz-QPR-AMトランシーバー外観

 20dBカップラーを使用して振幅変調のスペクトラムやスプリアス強度を確認して完成です。過大な入力をマイク端子に加えると帯域外領域での不要放射強度が大きくなります(100μW:-10dBm以上となる領域がある)。マイクに向かって大声を出すことはありませんが注意が必要です。

 下左は出力を約0.5W(27dBm)時の1MHzスパンのスペクトラムです。問題となるスプリアスは見えません。下右は出力を約1W(30dBm)時の250MHzまでのスペクトラムです。スプリアスは基本波よりも60dB以上抑えられており問題はありません。

 完成した日にはAMコンテストが実施されていました。送信はできませんが、複数の受信を楽しむことができました。


 以下の諸元により変更申請を実施して免許されました。これでオンエアできます。

50MHz-QPR-AMトランシーバー 送信機系統図
50MHz-QPR-AMトランシーバー 送信機系統図

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