ブレッドボードで28MHz-QRP-AMトランシーバーの製作

 ブレッドボードで作成した7MHz-QRP-CWトランシーバーは、10か月以上たちますが接触不良もなく安定して動作しています。同じように28MHzのAMトランシーバーでも作ってみるかと、秋月電子で1枚300円のブレッドボードを購入しました。ケースも前回同様100円均一のポリエチレンケースでブレッドボード3枚がちょうど収まります(電源ラインは1本外す必要があります)。

※ブレッドボードでトランシーバーを作ろうとする方は多くないと思いますが、使用するブレッドボードについて留意点を述べます。ここで使用したのは秋月電子で1枚300円のブレッドボード(BB-102)ですが、秋月電子には同じ形状で1枚950円のブレッドボード(EIC-102J)があります。値段に3倍の開きがありますが、使ってみればこの理由はよくわかります。部品の抜き差しの使い勝手は圧倒的に1枚950円のものがすぐれています。また、短期的な利用では問題にならないのですが、今回のように永続的に使おうとする場合(本来の使い方ではないですが・・)、1枚300円のブレッドボードは接触不良が多発して安定的に利用することが難しくなります。1枚950円のブレッドボートと同じメーカーのブレッドボードで作成した7MHzCWトランシーバーは、製作から1年以上たちますが接触不良もなく安定動作します。もし、長期的に使用する回路をブレッドボードで作成するなら1枚950円のブレッドボード(EIC-102J)をおススメします。

 回路図です。変調方式は終段コレクタ変調を予定して変調トランスのST-41Aを購入したのですが、100%変調が難しくブレッドボードで安定して動作させることができませんでした。このため、ミキサーICを使用した低電力変調とします。
 VFOは、si5351aをAVRのATTiny85で制御します。送受信で周波数を変えるので送信検出が必要です。1ピンのリセット端子をアナログ入力としてAD変換により送信検出します。その他、ステップ切替(メモリ書き込み)とRIT機能のスイッチもそれぞれ必要なのでAD変換による複数入力の読み取りとしています。

※回路図にはありませんが、終段の前に3dBのアッテネーターを入れています。

※si5351aからのLO出力を送信と受信で分けました。(2022-09-19)

 ブレッドボードでFCZコイル(サトー電気で購入)を使用できるように変換基板を作成します。ガラエポの両面ユニバーサル基板を万能ハサミで切ってヤスリで整形します。コイルの足とブレッドボード接続端子の接続は撚線をほぐした細線を使っています。

 中央のブレッドボードにsi5351aとAVRでVFOを作成しました。下側のブレッドボードは受信回路です。受信回路の構成は、高周波増幅(2SK241)→周波数変換(NE612)→IFフィルタ(Xtal3段)→中間周波増幅2段(2SK241)→検波(ダイオード)→低周波増幅(NJM386)としました。AGCとSメーターも付けました。受信テストには、モードは違いますが、FT8の周波数(28.074MHz)に合わせれば強力な局がたくさん出ています。
 秋月電子の1枚300円ブレッドボードは、差し込みが固いので使いずらいです。内部の作りが良くないのか斜めにピンが入りやすいです。また、長さ5mmくらいの短いピンは差し込みを保持することができない場合があります。やはり、安いなりの理由がありました。

 上側のブレッドボードに送信回路を作ります。マイクアンプのみだと大声で歪んだりするので、専用のマイクアンプICのTA2011Sを使用します。AFオシレーターのレベルを変えても一定の出力が得られるので、マイクの前での大声でも安心です。また、帯域を制限するためのLPFをオペアンプで作成しました。低い周波数は減衰が大きいので、HPFは不要と判断しました。オペアンプが1段あまるので、LPFをもう1段つければさらに良いかもしれません。
 ミキサーICは、NE612(SA612)とNJM2594を試しましたが、出力の大きなNJM2594を使うことにしました。変調出力もきれいです。送信回路は、VFOからの28MHzを低電力変調して増幅するのみの単純な回路です。トランジスターで1段増幅した出力は最大で13dBm程度あります。このまま終段増幅でいけそうです。

 終段増幅はFETのRD06HVF1を使用したリニアアンプとします。回路は広帯域高周波アンプの製作50MHzAMトランシーバーで利用したJA2NKDさんの考案されたもので安定して動作します。ところがブレッドボード上では、どうしても出力を上げることができません。グランドが安定しないこともあり、800mW程度までが精一杯です。効率も20~30%程度と良くありません。途中でトランジスターの2SC1971を使用したものを試したのですが、やはり安定した出力を得ることは困難でした。

 仕方ないので、リニアアンプは専用基板で作ることにします。古いCPU用のヒートシンク(5cm角)があるので、これに基板のサイズを合わせてCNCフライス盤で加工しました。

 専用基板ではRD06HVF1も安定して動作します。13dBm入力で最大3W程度までは問題ありません。効率も良いようで1W時に200mA弱、3Wでも500mA程度で発熱も少なく、このサイズのヒートシンクで連続動作も問題なさそうです。広帯域高周波リニアアンプの製作では、入力が11dBmを超えるとリニアな領域から外れてひずみが増えることがわかっています。このため前段に3dBのアッテネーターを入れて入力を10dBmまでに制限しました。

 LPFは、ブレッドボード上に作成しました。リレーによる電源とアンテナ切換回路もブレッドボード上に作成しました。

 ケースに入れて全体を接続しました。リニアアンプはケースのフタに穴をあけて固定しています。ヒートシンクが外に出せたので熱がこもることはありません。LCDもSメーターも内部にありますが視認性は問題ありません。

 出力は、無変調時に1Wとしました。1.4mのロッドアンテナでガンガン入電します。かなり強力です。話の口調から違法CBかと思いきや、コールサインのあるちゃんとしたモービル局でした(失礼しました)。Eスポも出ていて九州の固定局も強力に入電していました。

 スプリアスを確認しました。高調波はLPFで落とせています。ただ、基本波の上下4MHz程度離れたところで、やや大きなスプリアスがあります。50μW以下なので問題はありませんが、VFOから出ていることが確認できました。その他、下のほうにもいくつか見えますが、いずれも問題になるような強度はありません。100%変調時の帯域外領域を見てみましたが、こちらも問題となる不要放射は見えません。

 100%変調時の出力波形です。ピークがややつぶれていますが、こんなもんでしょうか。最大3Wとして、無変調時の出力を1/4の750mWに制限した方がよいかもしれません。ただ、別の無線機でモニターしてみましたがクリアな変調に聞こえます(・・・といっても、普段AMで交信しないので判別に自信はないです)。
 Sメーターもラベルを作成しました。休日の28.305MHzをワッチしているとたくさんの局がオンエアしています。デルタループアンテナで受信すると、Sメーターを振り切るような強力な局が多いですね。


 RD06HVF1は、無変調1Wで運用するにはパワー不足なのでAFT05MS004Nで試作したパワーアンプと交換しました。

出力波形は多少良くなりました。


 以下の諸元により変更申請を実施して免許されました。これでオンエアできます。


 AVRのプログラムソースです。AMは、帯域が広いのでRITは不要かもしれません。ステップスイッチを長押しするとその時の周波数をEEPROMに記録します。次に電源を入れるとその周波数で立ち上がります。I2Cのライブラリは、Tiny用ならどれでもOKです。今回は、ばんと(bant)さんがGithubで公開されているTinyI2CMasterを使用させていただきました。
 送信検出にリセット端子を使用しています。PTTが押されてからリレーが反応して送信回路に電源が供給されます。その供給電圧でトランジスターをスイッチさせてAD変換により電圧の変化を検出しています。したがって、送受切換の反応が若干悪く感じます。計測はしていませんが、長くても100ms以下なので通常の交信では影響ありません。

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