ATUを使用したデルタループアンテナの製作
アンテナの本数が増えて、室内への同軸ケーブルの引き込みが10本と増えました。同軸ケーブルを減らしたいので、HF帯のマルチバンドのアンテナを用意することにします。はじめは市販のV型ダイポールアンテナ(クリエートの730V-1AかナガラのTV-416J)を購入する予定でしたが、現用中の3.5MHzマイクロバートアンテナとの入れ替えとなるので3.5MHzにも出られるものを考えます。
そこで以前から興味のあったATU(アンテナチューナー)とデルタループアンテナを試してみます。これならWARCバンドも対応できます。ATUはCG-3000を購入しました。デルタループアンテナ本体は、ネットでの情報を漁ると18MHz用(波長17m)のものが多く使われています。アパマンハムや自宅での大型アンテナを上げられないベランダアンテナとして使用している例も多くみられました。これらを参考にしました。
ネットでの情報では、ATUでループ系のアンテナを使用するとローバンドでのアンテナインピーダンスが数Ωと低くなるためATUを壊す恐れがあるとのことです。CG-3000がどの程度のインピーダンスまで対応できるのか不明ですが、故障するのは避けたいのでインピーダンス補償用の抵抗を入れます。抵抗値は20Ω程度あれば良いとのこと。ローバンドでは、多くの電力が抵抗で消費されるので100W運用をにらんで50W以上に耐えるものとします。高周波での利用なのでダミーロードの製作で利用した酸化金属皮膜抵抗が良いのですが手持ちのセメント抵抗で作ります。82Ω20Wを4本並列として約20Ωで80Wの耐電力です。セメント抵抗は巻き線抵抗なので周波数が高くなるとインピーダンスも大きくなるのですが、HF帯での利用であれば大きな問題とはならないと考えました。VU40の塩ビパイプで防水ケースとします。
デルタループはグラスファイバーの釣り竿を利用します。ネットでの情報参考にアマゾンで三代目 剛(つよし)6.3m(3,607円)を2本購入しました。釣り竿は塩ビパイプVP30にぴったり入るとのネット情報もありましたが、根元が若干太く、塗装を落としても最下部が少しだけはみ出ます。この部分は金ノコで切り落としました。釣り竿の段間は伸ばしただけでは緩む可能性があるのでナイロン粘着テープで固定しました。
塩ビパイプと釣り竿はしっかりとはまっているので抜け落ちることはないと思いますが、念のため末端をM5ボルトで固定しました。35Φ40㎝程度のアルミパイプにDXアンテナのクロスマウント(アマゾンで877円)2個を使用してV型に固定します。マストとの固定用のクロスマウントはナガラの八木アンテナを解体したものを使用しています。
エレメントは1.2㎜の銅線を16.7mの長さとし、釣り竿の中を通して逆三角形にしました。釣り竿は先端部分を除いて使用しています。作ってみるとやたら巨大です。このサイズをアパマンハムやベランダアンテナとして使用している方は・・・すごいです。マストとなるアルミパイプにATUを固定してデルタループを接続します。コールド側(アース側)にはインピーダンス補償用抵抗を接続します。取付線などの合計が60㎝程度と長くなったのでエレメントの合計は計算上17.3mとなりました。
一旦、庭の木に仮固定して動作を確認しました。ATUへの同軸ケーブルにはフェライトコアFT240-#43と3D-2Vで作ったコモンモードフィルタを挿入します。また、電源ラインにも同じフェライトコアで回り込み防止を行います。この仮設の状態で1.9MHzから28MHzまですべてでチューニングが取れることを確認しました。夕方以降に3.5MHzマイクロバートアンテナとの比較を行いました。FT8で比較すると高さの違いからデルタループが若干受信が弱いようですが、ノイズが少ない分S/Nは同じような感じです。とりあえず数局とQSOしてみましたが使えないことはなさそうです。
3.5MHzマイクロバートアンテナを入れ替えてタワーの残骸の最上部(8m程度)に取り付けました。高さが低いので大きく見えて威圧感があります。家族からはゴキブリやカミキリムシの触覚みたいで気持ち悪いと不評です。タワーの中に6mのマストパイプが残してあるので、いずれこれに取り付けてもう少し高さを稼ぎたいと考えています。強風に耐えられるか不明ですが、たとえ折れても軽いグラスファイバーなので大きな被害はないと考えています。また、銅線を通してあるので落下することもないと思います。
1.9MHzと3.5MHzで同調後のリターンロスをスペアナで見てみました。緑色の線はリターンロス14dBでSWR1.5を示しています。コイルとコンデンサの組み合わせで同調するので目的周波数できっりとSWRが下がることはないのですが、おおむね1.5以下となるので問題はありません。7MHz以上もSWRは1.5以下になります。無線機の周波数変更すると受信音が小さいのですが、送信して同調すると受信音が大きくなり、ATUを含めたアンテナ全体で同調することがよくわかります。
ただ、28MHzはSWRが高めとなります。FT8で運用する28.074MHzでSWR1.6となりました。ATUの電源入れ直しでたまにSWR1.1と低くなるのですが、次に電源を入れるとこの状態でチューニングされます。特段問題なさそうなので気にせずに運用します。50MHzはATUの規格外なのですが、FT8の50.313MHzでSWRが1.7程度となり使えないことはありません。数局QSOしてみましたが、ベランダのホイップアンテナ(UHV-6)よりは良さそうです。高い周波数は波長が短いので線路長の影響がシビアに出るのかもしれません。また、インピーダンス補償用の抵抗の影響も無視できないのでしょう。
入れ替えた3.5MHzの状況ですが、デルタループも高く上げるとノイズが気になります。マイクロバートアンテナよりは多少ましですが、常時、Sメーターで2~3のノイズです。FT8の受信に関しては悪い印象はありません。ただ、飛びは明らかにマイクロバートアンテナよりも劣っている気がします。国内でのもらえるレポートが良くありません。また、pskreporterで確認すると国外からのレポートがありません(下の画像左)。時間帯やコンデションによるとは思いますが、マイクロバートアンテナでは悪くてもアジア圏からのレポートが必ずあったのですが、それもありません。1.9MHzも、もらえるレポートがかなり悪いのですが、相手のアンテナに助けられるのかとりあえず問題なくQSOできます。ただ、これも国外へ飛んでいないようです(下の画像右)。
デルタループアンテナとマイクロバートアンテナの比較はこちら
14MHzではエンドフェッドアンテナと切り替えながら比較しましたが、デルタループのほうが受信はSメーターが2~3程度良い結果が得られます。ノイズはどちらもほぼありません。送信もデルタループの飛びがいいような気がします。ただ、デルタループの地上高が高いのでその影響が大きいと思います。
10MHzではマイクロバートアンテナと比較しましたが、受信でのSメーターの振れはほぼ互角ですが、デルタループはノイズがほぼないのでSNRは良好です。送信もデルタループの飛びがいいように感じます。
7MHzはフルサイズのダイポール(逆V)との比較となりますが、すべてにおいてダイポールのほうが性能が上です。ただ、国内局とのQSOは普通に使えます。
その他、比較するアンテナが無いので判断はつきませんが、コンデションが良い状況ではない現状でも21MHzのFT8でヨーロッパや南米と交信することができました。しばらく使ってみます。
NanoVNAを入手したのでHF帯の各バンドのSWRを測定してみました。画面キャプチャーはNanoVNA-Appでとりました。リモートモードで設定するとスミスチャートが変な動作をします。このため、スミスチャートは無視してください。
28MHz以外はSWR1.5以下になります。SWR1.5以下の帯域も、最も狭帯域な1.8MHzで75kHzとなり運用には問題ありません(すみません。マーカーの設定がバラバラで画面上の帯域は正しくないものがあります)。28MHzは、CG-3000の電源を入れなおすとSWR1.5以下となる場合もあります。SWR2.0以下の帯域が十分にあるため運用には支障がありません。
6件のピンバック
1.9MHz用のマイクロバートアンテナの製作 – henteko.org
3.5MHzと7MHzの2バンドダイポールアンテナの製作 – henteko.org
50MHz用のダイポールアンテナの製作 – henteko.org
3.5MHz用のマイクロバートアンテナの製作 – henteko.org
ブレッドボードで28MHz-QRP-AMトランシーバーの製作 | henteko.org
アンテナチューナーAT50とカーボン釣り竿アンテナ | henteko.org
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