DDSモジュールを使用したSWRアナライザーの製作

※リチウムイオン電池の過放電監視防止のため、電池電圧を表示するようにしました。(2020-05-19)

 新型コロナウィルスの影響で外出を控えています(令和2年のゴールデンウィーク)。自宅での時間がたっぷりとあるのでアマチュア無線を楽しんでいます。最近はFT8というデジタルモードを利用しています。FT8は10Wでもアンテナさえよければ、海外との交信もなんとかなります。FT8は14MHzに多くの局がQRVしているのでベランダに取り付けたマルチバンドホイップ(コメットのUHV6)で・・・と頑張っていますが、やっぱりフルサイズのアンテナが欲しくなります。簡単に・・ということで、エンドフェッドアンテナ(ツェップアンテナ)を2Fのベランダ上部に取り付けて、10mのワイヤーを張ってQRVすることにしました。

 アンテナ調整は、以前作ったアンテナアナライザー|で作業を行っていたのですが、共振周波数は確認できてもSWRがどの程度かわからないので、面倒でもスペアナリターンロスブリッジを使って確認していました。この先もいろいろとアンテナを調整したいので、2年ほど前に実験したSWRアナライザーをきちんと作成することにします。

 前回の試作でSWRアナライザーは十分に実用可能と判断していますので、ほぼそのままの回路で作成します。プログラムも基板実装に合わせて入出力ポートを一部変更したのみです。

DDS SWRアナライザー回路図
DDSモジュールを使用したSWRアナライザー回路図

※周波数ステップのアップとダウンスイッチを独立させて、それぞれの長押しでキャリブレーションと周波数メモリ機能を実装しました。

 DDSモジュールはAD9851を使用しています。アンテナアナライザーも同じAD9851を使用したのですが、これを使用する際の問題点として、消費電力が大きいということがあります。AD9851のみで5Vで100mA以上の電力が必要となります。このためアンテナアナライザーでは、DC-DCコンバーターを単3のニッケル水素電池を3本使用して動作させて200mA程度の出力を確保していました。今回はリチウムイオン電池の18650セルを使用して電源を確保して小型化することにしました。

 リチウムイオン電池は、安全に使うためには専用のモジュールを使用するのが簡単です。aitendoで以前から目をつけていた充電・昇圧一体化DCモジュール (DC4056ADJ0427)を調達しました。このモジュールは充電制御にTP4056、放電制御にSDB628を使用したもので、両チップともネット上に情報が豊富にあります。モジュールは、充電制御と放電制御の個別の機能をくっつけて1つの基板に実装してあります。価格は295円と安くてよいのですが、充放電の連携制御が無いので使い方には注意が必要です。

 ほぼモジュールの寄せ集めとなるので製作には時間はかかりません。高周波ブリッジとログアンプのAD8307は、ランド方式の小さな別基板としました。秋月電子のポリカーボネートケース(中)の中にすべて納めました。メインの基板以外は両面テープで張り付けてあります。(電源スイッチは、リチウムイオン電池の+側に入れてあります。 電源スイッチは電源モジュールのパターンをカットしてその間に入れました。詳細は最下部に記載。)

 はじめは電源モジュールの負荷側にスイッチを入れたのですが、この状態だとバッテリーの電圧が昇圧コイルとショットキーダイオードを介して負荷側につながり、微弱電流が常時流れることがわかりました。電池からの電流値は0.16mA程度でしたが、リチウムイオン電池が過放電状態になる恐れがあると判断しました。

DDS SWRアナライザー
DDS SWRアナライザー外観
DDS SWRアナライザー
DDS SWRアナライザー内部

 ベランダホイップの7MHzの測定結果です。アンテナアナライザーで測定した共振周波数とほぼ同じ周波数でSWRが最低となりました。なお、SWRの最低値は低くなるのですが、短縮アンテナの宿命でSWR1.5以下は40KHz程度と広くありません。

アンテナアナライザー

 ベランダからのばした14MHz用のエンドフェッドアンテナの測定結果です。共振周波数が低いですがCWも運用するのでこのままとします。これもアンテナアナライザーとほぼ同じ周波数でSWRが最低となります。SWRは少し高くなっていますが、SWR1.5前後が150KHz程度ありブロードな同調範囲となります。

アンテナアナライザー

 ディップメーターとしての使い方も可能です。適当に作ったワンターンのループアンテナを使って同軸トラップコイルの共振周波数も測定することができます。ただ、これはSWRを測定する必要はなく、共振周波数を探すだけなのでバーグラフで表示するアンテナアナライザーのほうが使いやすいと思います。

 回路全体で約140mAの電流が流れます。試してはいませんが、リチウムイオン電池は2000mAの容量があるので、DC-DCコンバーターの効率を含めても、計算上で10時間以上は使えそうです。充電はケースを開けて行います。

 電源スイッチOFF(リチウムイオン電池が切り離された状態)でマイクロUSBの充電端子に給電すると、SWRアナライザーの回路が動作します。電源スイッチをONするとバッテリーへの充電が開始されます。充電制御はバッテリー電圧監視を行っているはずです。この状態では、回路への供給電流と充電電流があるため充電制御が正常にできるかが不安です。過充電が怖いので同じ2000mAのモバイルバッテリーから充電を行っています(笑)。 電源スイッチは電源モジュールのパターンをカットしてその間に入れました。詳細は最下部に記載。これにより電源スイッチOFFで充電すれば負荷が切り離された状態で充電できるため安心です。


2020-05-19

 使っているとリチウムイオン電池(18650)の過放電が気になります。出力を制御するSDB628は、データシートでは入力電圧の下限が1.98Vとなっています。この電圧まで放電させると過放電状態となり電池にダメージがありそうです。まともなリチウムイオン電池は保護回路が入っているので過放電が起こらないと思いますが、メーカー不明の安物の電池は保護回路がないと思われます。
 本来なら、電池電圧を監視して電源制御すればよいのですが、いまさら面倒なのでとりあえず電池電圧がモニターできるように改修しました。LCDの1行目の先頭に電池電圧を表示します。AVRのADCで電池電圧を測定しますが、リファレンス電圧を2.56Vとしているので4V以上となる電池電圧をそのまま測定できません。抵抗を使って分圧して測定することにします。正確ではないのですが目安としては十分です。これで3.0V以下となったら充電するようにしておけば問題ないでしょう。なお、電源つけっぱなしで放置すると1.98Vまで放電されるので注意が必要です。


2020-08-23

 aitendoの充電・昇圧一体化DCモジュール (DC4056ADJ0427)は、画像で見て左半分が充電回路、右半分が放電回路(DC-DCコンバーター)となっています。この間がパターン上で接続されているため常時放電回路が動作状態となります。この間のパターンをカットして、ここに電源スイッチを入れればより使いやすくなります(画像はパターンをカットして半田付けのためにレジストをはがした状態)。

Aitendo 充電・昇圧一体化DCモジュール DC4056ADJ0427

 AVRのプログラムソースです。I2Cのライブラリは、Tiny用ならどれでもOKです。今回は、ばんと(bant)さんがGithubで公開されているTinyI2CMasterを使用させていただきました。

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dds_swr_analyzer_main.c 7.70 KB 142 downloads

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i2c_lcd.c 2.01 KB 115 downloads

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i2c_lcd.h 0.50 KB 110 downloads

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